アクトレイザー・ルネサンス アルカレオネにて

アクトレイザー・ルネサンス

「それにしても、天使様からお呼び出しいただけるとは思いませんでした」
 シェマールがそういって微笑むと、“愛らしい天使様”は言葉の裏を勘繰って頰を膨らませたが、この発言に他意はない。実際、予言されたサタンとの戦いにおける役割が終わったいま、星玉の英雄が神に必要とされるとは思いもよらないことだった。
 《永遠なる緑》を離れてから、シェマールは神への祈りを日課に取り入れた。神殿にいれば、神への感謝や願いを伝えに来る人々と会い、マラーナのためすべきことを見付けることもできた。だがサタンの恐怖が去ると人々の足は再び神殿から遠退き、この頃はシェマール自身も神殿までは足を運ばず、就寝の前に一日の報告として祈る程度になっていた。
 現金な話だが、最早、神でなければ解決できないことはなく、人は自らの足で歩いているのだ。
 そして神もまた、いまさら英雄たちを必要とするような事態はない、はずだった。だが神はシェマールの予想以上に、人の世話がお好きだったらしい。わざわざ手付かずの大地に人を招き入れ、更に彼らを異変から守るため英雄を呼び寄せたのだから。
「この肥沃な大地をお前たち人間に与えてやるのですから、そのくらい働いてもらいますよ。生きる上での困難には、まず地上の者で立ち向かうべきなんでしょう?」
 以前己が言った言葉を返されたが、シェマールは少し心外だった。それならば、この理想郷アルカレオネの困難に立ち向かうのは、アルカレオネの民の仕事である。無論、神の役に立つことに不満があるわけではないが。
「それはもちろん、喜んで。しかし私の過去の発言のせいで、他の皆様まで招集されたのだとすると、申し訳なく思いますね」
「……別に、お前がああ言ったから呼んだわけではありません。神様はそのように狭量な方ではありませんから」
 戯れたつもりだったが、神への不敬と捉えられてしまったか。シェマールは新天地でつい気が大きくなった己に反省して、謝罪の言葉を口にした。天使には、神の心を見誤ったことを詫びたように見えるだろう。
 なんだかんだと言いつつ寛大である天使は、シェマールが萎縮したと思ったのか、今度はとりなすように言った。
「それに、お前と似たようなことはフィロトスも言っていましたよ。……いや、思い返してみると、もっと生意気でしたね」
 曰く、人は人が助けるしかない、とか。
「フィロトス様が、そうおっしゃったのですか?」
 意外だった。まだ為人を知るほど言葉を交わしていないが、彼は神の英雄たることに誇りがあるように見えたし、天使とも気さくな間柄に見えた。正直に言えば、この大地に集められた6人の英雄の中で、最も自分と合わなそうな人物に見えたのだが、その彼が、サタンの支配下にあるときに、神に縋るのでなく、自助努力することを説いたのか。
「確かになんでも神の御力に縋ってはいけませんが、お前たちの言葉は神を敬う気持ちに欠けているのですよ」
 教団の外にも同じことを唱える者がいて、天使もまた、生意気だなんだと言いながらその発言を認めている。《永遠なる緑》は幻だったが、学んだすべてが誤りであったわけでない。それが分かって、シェマールは思わず微笑んだ。お陰で天使からはお小言を増やされてしまったが、それもまた、この地での良い思い出になりそうだった。


アクトレイザーで二次創作すると思わなかったですね。
星玉の英雄という新要素は、世界観を崩す面もあって悩ましいのですが(特にアロンゾは矛盾の塊)、その分納得するために色々考えさせられ、こうやって勝手に動き出すようにもなりました。

英雄たちのうち、女子組は簡単に仲良くなるイメージができました。一方、男子組はどうかと考えたときに、このSSで取り上げた発言を思い出し、一匹狼を気取るアロンゾより、フィロトスとシェマールの方が意見が合うかもしれないと思いました。
アルカレオネ終盤で、英雄たちが人々に自ら戦う術を伝授する展開も、思えば「人が人を助ける」という2人の考えが生きています。

アクトレイザー・ルネサンス

それでちょっと書いてみたのですが、実際には作中で二人が絡まなかったという……。
当初はちゃんとフィロトスとシェマールが仲を深める予定だったのですけれど、どうせアクトレイザー題材なら天使を書きたくなって、テーマが完璧にぶれました。シェマールは天使のことが好きだろうなぁと思ったら、そちらに傾いてしまった次第です(恋愛的な意味ではありません)。
まぁ、書いているうちにテーマが行方不明になるのはいつものことだからいいでしょう。

シェマールの「神のもたらす平和を待ち望んでいればいいわけでない」という考えは好きです。まあ、その正論を天使の反論を封じ込るのに使っていたのは、褒められないですけれど。
そしてシェマールは、本人も言っていた通り、民が神を信仰することを止めなかったけれど、登場した直後のフィロトスは、民が祈ること自体に対し否定的でした。

……だけど、こんなところでお祈りなどしても仕方がない。
結局、人は人が助けるしかないのだからな!

その直後、天使から神が実在することを聞くと、証明も求めずすぐ受け入れて謝るので、その発言を巡った衝突はしなかったけれど、自立志向は強い方だと思います。フィロトスは過去の人間なので、案外、《永遠なる緑》の前身組織の教義に関わっていたとか、そういうつながりがあっても面白そうだなと思いました。

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