第十五回Legenders(レジェンダーズ)編
個と個の魅力が合わさり、Legendersの妙が生まれる
先に告白しますが、ーーLegenders、好きです。
元々、サイスタ初期実装曲の中で「Legacy of Spirit」が好きだと思っていたのですが、6thライブ東京でガツンとやられました。まさか音楽性と中の人から好きになるユニットが出てくるとはなぁと思いながらLegendersの歩みを調べていくうちに、3人の奇跡的な組み合わせに感動し、更にそれぞれのキャラクターの良さもどんどん感じて、いまでは普通にLegendersファンになりました。
Legendersの3人は、実際のオーディションイベントで候補生たちの中から選ばれてこの組み合わせになったことに運命を感じます。
面白いのは、Pによって、どんな関係性のユニットか印象が異なるだろう点です。
- 大義のために己を捨てるタイプな雨彦に対し、クリスが手を引っ張り、想楽が背中を押して自分の意思を思い出させてくれるサンドイッチの関係
- モラトリアムな想楽に対し、大人二人が子供扱いしたり大人として、彼自身を認めて肩の力を抜かせている関係
- 情熱の方向性が迷子なクリスを、視野の広い雨彦と想楽が少し手助けして望む道に導いてあげる優しい関係
3人の誰を頂点にしても三角形が成立するのは、Jupiterとだいぶ違う在り方です。
Legendersに関しては「315パッションアワー!!!」があったので、同日に番組を担当したFRAMEとの違いも見えて、より面白く感じました。
例えばオーディオコメンタリーなら、FRAMEはわいわい喋ったり一緒に歌い出したり陽気だし体育会系のノリが垣間見えましたが、Legendersはそもそも言葉数が少ないうえ、相槌を打つ程度で、会話が続きません。
記念撮影でレジェンド級の決めポーズを求められ、「ラブカのポーズをしましょう!」と謎の提案をするクリスには笑ったし、想楽がそれでウケるか懐疑的なのも、雨彦がとりあえず乗っかるのも、個人個人の我の強さが見えました。
あの世界のファンからすると、クリスが海の話で一人盛り上がって、想楽と雨彦がそれに付き合ってあげている温度差のあるユニットに見えて、それが「ビジネスライク」と言われるのかなぁと思います。
実際のところ、彼等自身がお互いの事情に深く踏み込まないのは、関心がないからでなく、自分がされたくないことをしまいという気遣いだと思います。だから、一緒に過ごす時間が長くなるほど、少しずつ距離が近付いていって、絶妙な仲が形成された結果がいまのLegendersなのでしょう。
見通す人、葛之葉雨彦
自分のことは話さず、他人のことはお見通しと言わんばかりにすましている、謎めいた雨彦。
一歩引いて全体を見守っていることが多いのは、ユニットの最年長、リーダーという立場もあるでしょうけれど、もともと積極的に前に出る性格ではないのだろうと思います。
それが本人にとっての事実だとはいえ、「掃除するためにアイドルになった」と宣ったり、悪ノリしたり、周囲を煙に巻いたり、なかなか個性的な言動をしています。
Pや想楽を頻繁に揶揄ったりもします。むろん、決して意地悪ではなく、場を和ませようというサービス精神の表れなのは明らかです。まぁ、事務所会話の「顔に何かついてるぜ?……目と耳がふたつずつと、ああ、こりゃ鼻だな」の発言には「おい、こら」と思わず突っ込みましたが。
それでいて自分を「面白みがない男だと思っている」ことを知ったときには、なんて面白い男だろうと思いました(笑)。
雨彦は言霊を大事にするだろうから、冗談は言っても嘘は言わないと信じているので、たぶんそう思っていることは真実なのでしょう。
なんでも知っている顔をして、実は自分のことをまったく知らない男なのかもしれません。
自分を見せないのも、鋭心の例のように、見せる自分がそもそもないという可能性があります。
苦痛とは思っていないのだろうけれど、家のしがらみの中で色々なことを諦め、男衆に許された「掃除」を唯一のアイデンティティにして生きてきたから、それ以外は持ち合わせていないと考えているのかも知れません。
でも己から、手段とはいえアイドルになることを選んで315プロに入社したのだから、この場でなにかを掴んで、他人事でない自分だけの人生を歩いて欲しいし、雨彦にはそれもできると思っています。
余談ですが、雨彦は事務所には自分がしている「掃除」の詳細をぼかしているけれど、あのステージ衣装を用意されたとき、どう思ったんですかね。3人お揃いなら、ユニット衣装だからと深く考えないで済むけれど、雨彦だけヒトガタくんが付いた和風衣装です。プロデューサーは一体なにを知っているんだ?と疑問に思わなかったんでしょうか。それとも、雨彦の方からオーダーしてあの衣装だったりするのでしょうか。
北村想楽は思うこと多し
315プロ所属の49人中、初見で名前の読みかたがわからなかった唯一のアイドル。
最初は、ツートンの髪の毛が変わっているだけで、普通の子だと思いました。
まず元雑貨屋店員という前職が地味ですし、そもそも大学生のバイトです。五七五の節を付けたり、語尾を伸ばす喋りかたには特徴があるけれど、アスランのゲヘナ語のようなインパクトや必然性はなく、意図的に特徴を付けているようにも思いました。
しかしエピソードゼロで、想楽が心の中では斜に構えつつ世間と折り合いをつけているところを見たり、座右の銘が松尾芭蕉の「愚かなる者は思うこと多し」であることを知ったりして、普通の人、凡人というところが想楽のキャラクター性であり、良さなんだと気付きました。
いや、北村想楽が真に凡人か、という話は議論の余地があるところだと思いますが、少なくとも想楽が自分を「凡人だ」と思っている19歳の若者であることが、彼の魅力を生んでいるのだと私は思います。
人と揉めたくないから物腰は柔らかいけれど、頭の中は打算的で、目敏いのでズバッと切り込んだりもするけれど、それを実は(失言だったかなー)と考えたり、そうやって「思うこと多し」な自分を悟られないよう鎧ったり、でも自分らしく生きたいとも願っている、一面だけでは語れない部分が人間臭く、好ましく感じました。
色々考えを巡らせているが故に、ピクチャースタジオの表情パターン数も最多なんだろうなと思います。
アイドルになってからにしても、自分の素を「キャラ」という体で売り出しているとは言え、完全に好き勝手しているわけでなく、取れ高や周りが求めていることを意識している様子があります。
しかしLegendersのメンバーに対しては、一切頓着せず歯に衣着せぬ物言いをするのが、彼の無意識の甘えに見えて、微笑ましく感じます。
本人は、手間のかかる大人二人の面倒をみているつもりだろうし、実際そういう面もあるのですけれどね。
大海の稚魚、古論クリス
実は、クリスを担当するか真剣に悩んだくらい好きです。結果として、彼の海への情熱に応えてあげられないことが引け目で担当は諦めましたが、好きは好きです。
期間限定SSRわだつみの語らい、うっかり94回引くくらいには欲しかったです……。
いつか限定分のセレクトチケットが発売されたら絶対交換します。その前に復刻も回すと思うけれど。
そんなわけで未練を残しつつ担当していない身ですが、メタ的な意味でなく、実際のプロデューサーだったらと過程すると、これほどプロデュースのしがいがある人はなかなかいません。
- 素材は良いのに本人が活かせていない(自主性に任せるとズレたことをする)
- 素直な性格なので、Pのアドバイスがあればそれに従ってくれる
正に、Pの手腕で輝かせることができるアイドルだと思います。
そんなわけで、315プロでも屈指の美形なのに、中身はとても純真で、犬のような愛嬌がある可愛い人。
本来「ビジネスライク」なLegendersを仲良しにした功労者だと思っています。人付き合いが苦手と言いながらユニットメンバーのことが大好きで、雨彦や想楽が褒められると我が事のように喜ぶのだから、絆されてしまいますよね。
私がキャラクターとして惹かれたのも人柄が主です。
ーーいや、実はサイスタリリース直後は「感謝の気持ちを伝えるために海亀の産卵を見せる」という理解不能なアイドルエピソードが登場したことにビックリして引きました(笑)。アプローチの仕方が独特すぎます。
しかし常に本気で、自分を飾ることなく無邪気に体当たりしているが故の言動だとわかって、直ぐ好きになれました。己の愛を恥じずに堂々と見せる姿勢は、オタクとしても尊敬できます。
本人としては悩みや挫折もあるわけですが、基本的には超ポジティブな人で、負の感情を顕にしません。恐らく生活面で苦労をしたことがないためだと思われる、おっとりしたところも心地よいです。
なんでも海に紐付けて喋ることができるのは、知識量だけでなく結構な才能だと思えます。
一方で、自由奔放で、無神経に見える面があるのも事実です。特に海の話となると捲し立ててしまうのは、クリスの「海の魅力を伝える」という目的にも反しており、改善点です。
クリスは無邪気ゆえに、誰でも自分と同じレベルでものが見えていると思っている狭窄的な面があります。ついでに言うと、海が嫌いな人が存在するとも思っていないんだろうなぁ……と、いつか盛大に地雷を踏みそうでドキドキします。
とはいえクリスも己のコミュニケーション能力に問題があることは認識しているし、雨彦と想楽という、その気になればクリスの改善点を的確に教えてあげられる仲間もいるので、Legendersの活動を通して成長できるはずです。
まぁ、完璧に卒のないクリスに成長したら、今度は物足りなく感じるでしょうから、多少爪の甘いところは残して欲しいですが……。