アイドルマスター SideM GROWING STARS メインストーリー二章5話より。
「九郎ちゃん、昨日はお楽しみだったらしいじゃないか」
翔真の思わせぶりな言い回しに九郎は目を白黒させたが、今回は直ぐなんの話か合点がいった。
昨日、THE虎牙道の円城寺道流と共に、とある共通項で結ばれたアイドルによる交流会ーーすなわち、ユニットのメンバーに悩まされる保護者の集まりを開催したのだ。
「お耳が早いですね」
秘匿していたわけではない。だが呼びたい相手に直接声を掛けて集まったので、他のメンバーに知られるのはもう少し後のことだと思っていた。
「まぁね。お狐ちゃんたちが飛び入り参加したんだろう?」
「そうなんです」
そこが情報源だったか、と九郎は納得した。
同い年の好で交流した際、自由な歳上たちに苦労していると聞いたため、Legendersからは北村想楽を呼んだのだ。
当日、仕事が押して遅れそうになった想楽は、ユニットメンバーを楽屋に置いて帰る際、この会について話したらしい。その結果、想楽が店に到着してから30分後、315プロでも群を抜いて長身の2人がひょっこりと現れたのだった。
なぁに、諸先輩方から見てユニットの保護者が北村だってことに異論はないが、北村の保護者は俺たちだから顔を出すべきかと思ってなーーと面白そうに宣った雨彦はともかく、その後ろで無邪気な笑みを浮かべているクリスを追い返すのは、ユニット内の面倒ごとをつい引き受けてしまうような彼等には難しいことだった。もっとも、後でわかったことだが2人が会に合流したのは偶然で、単に遅くなったから食事をしようとして、たまたま同じ店に寄ったらしい。
「ソラちゃんの苦い顔が目に浮かぶようだわぁ」
それはその通りだったのだけれど、昨日のことを思い返してみると、あの顔はマイナスの感情だけでなかったのだろうと九郎は思う。
雨彦とクリスが見守る中、その二人への不満をつらつら述べる想楽に、ハラハラしたのは確かだったが。
「ですが、Legendersの皆さんの様子を拝見して、私たちも持ちつ持たれつ、互いに頼りにしているところがあるのだと、改めて思わされました」
雨彦たちは愚痴を聞いてやけに嬉しそうに笑っているし、ふと気付けば、想楽もクリスにオススメの魚を聞き、それを雨彦の金で注文していたのだから、奔放さでは案外いい勝負だ。
仕事においては、エンジンとしてクリスが二人を引っ張っることもあるし、逆にヒートアップしすぎたときは雨彦の一言で不思議と場が落ち着くなど、各々のやりかたでユニットに貢献していると見ていた。
なんだかんだ言って、想楽も2人のことを認めていて、好きだからこそ、意見したいことがたくさんあるし、雨彦たちはそれを理解しているから笑って聞いていたのだろう。
そんな彼らを見る内に翔真とキリオに会いたくなったことは、まだしばらく九郎一人の秘密だった。
というわけで、「315プロ保護者の会」実現の翌日話でした。
5話配信直後に台詞出しは済んでいたのですが、彩の二人の喋りやLegendersの解釈に自信が持てず寝かせていたので、今更なネタになってしまいました。
保護者の会は、誰が選ばれるのか微妙に異論反論ありそうなユニットがあるのが面白いと思います。Dramatic Starsは3人とも自分が保護者ポジションだと思っていそうだし、F-LAGSは逆に全員他薦しそうです。
Legendersは雨彦の方かなと思いましたが、九郎が人選に関わるなら想楽だろうと考えたのと、二人の悪癖をああだこうだと想楽が論い、それを当人たちがニコニコ見守ってる光景が思い浮かんだので、想楽になりました。そして、想楽に"クリスから聞いたオススメの魚を雨彦の金で注文"して欲しいという理由で、お茶会でなく食事会になりました(笑)。
ついでに、元々クリスの知り合いの漁師の店で、紹介された道流が気に入って保護者会の会場に設定したため、クリスが来店した時に店主から「お友だちが来てますよ」と声を掛けられて気付いたーーなどという裏設定もできていたのですが、その辺は九郎の視点では知り得ない話なのでカットし、ここに記載しました。