アイドルマスター SideM GROWING STARS 14歳組(アニメ設定)

GROWING STARS

妄想Bパターンという感じの、唐突な翔太と大吾のお話です。エセ広島弁注意。


「ほんまにテレビの子じゃあ」
「え?」
 言われた緑の髪の少年は、不思議そうに目を瞬かせた。
 言った大吾の方は、意図なく口から出た言葉に照れて、なんとなく笑いながら頭を掻いた。
 今日は、事務所で1番の稼ぎ頭だという先輩ユニット、Jupiterとの合同レッスンにして初顔合わせだった。
 実は、大吾は上京したばかりの頃にたまたま遭遇したテレビ番組のロケ収録で、この少年を見たことがある。芸能に疎い大吾は、当時名前も分からなかったのだが、ああいう目を引く子がテレビの世界にはいるのだなぁと記憶に残っていた。だから、ちょっとした再会気分になってしまったのだけれど、少年からしたら意味がわからないのは当然だった。
「すまん! わしはF-LAGSの兜大吾じゃ」
 仕切り直すことにした大吾は、いったん話を切ると笑顔を改めて右手を出した。
「ふーん、よろしくね」
 しかし少年は手を握り返すことも名乗り返すこともせず踵を返し、同じJupiter所属の色男と何某か話し始めてしまった。あの日のカメラの前では明るく無邪気そうに見えたのだが、イメージよりだいぶ淡白な様子に、大吾は呆気に取られた。
 ……振られたのぅ。
 そう思ったところに仲間の声が聞こえ、大吾はそちらに視線を向けた。
「あの冬馬くんと一緒にレッスンできるなんて、興奮だよ」
 涼の顔いっぱいに感無量と書いてあるのが見える。
 一方の天ヶ瀬冬馬は、噂に聞いていたとおりの熱血具合で笑い飛ばした。
「なに言ってんだ。こっちだって、あの秋月涼がいるユニットってんで、注目してるぜ!」
「いやぁ、僕についてる“あの”はニュアンスが違いそうだけれどね」
 涼は少し恥ずかしそうな風だったが、リーダー同士の会話に笑顔の花が咲いているのを確認できて、大吾はほっとした。
 事務所の仲間と仲良くしたいね、と最初に言ったのは涼だが、大吾たちも同感だった。そのため、今回初めて顔を合わせるJupiterとは、レッスン開始まで少し会話をする予定だったのだが、大吾の方はどうも失敗したらしい。Jupiterの面々がすでにレッスン室にいると聞いて、着替えが先に終わった涼と大吾の二人だけで駆け付けたのが良くなかっただろうか。少なくとも一希がいれば、彼が色男の方に挨拶している間くらい、話をさせて貰えたかもしれないがーー。いずれにせよ、少年を追いかけてするほどの話はないし、色男に狙いを変えるにしても、会話に割って入るのは躊躇われる。
 大人しく柔軟でもしていよう。そう決めてレッスン室の床に尻を下ろした途端、軽い足音が戻ってきたことに気付き、大吾は顔を上げた。
「ねえ、大吾さんって14歳なの?」
 そこにあったのは、興味の色に輝く大きな瞳だ。大吾の返答を待って、姿勢を大きくこちらに傾けている姿は、まるで告白の返事を待つ少女のようでもある。
 先程と打って変わった友好的な様子に大吾は一瞬戸惑ったが、少年の後ろから色男のウィンクが飛んできたのを見ておおよその事情が飲み込めた。どうやらユニットの最年少同士の仲を取り持とうと、少年が興味を持ちそうな情報を吹き込んでくれたらしい。
「おお、そうじゃ」
「じゃあ同い年だ。事務所で初めてだよ」
 先輩アイドルたちの名前を覚えるのが精一杯で、全員の年齢までは正確に把握できていなかったが、確かにこの事務所は中学生のアイドルがほとんどいないようだった。
 しかし、同い年という共通項だけで友好的に変わるものか、と大吾が考えていると、少年はタネを明かした。
「最近、冬馬くんも北斗くんも、事務所内同い年組とかいう括りで番組に起用されてるから、僕も14歳仲間が欲しかったんだ」
 なるほど、大吾はまだユニットでの仕事も始まっていない段階だが、ユニット以外の繋がりでする仕事があるなら、日頃から仲良く接しておくこともプロとして必要なのだろう。大概のファンはアイドル同士の仲が良いことを喜ぶ、とプロデューサーも言っていたことだし、親しく過ごしていればエピソードとして話せるお互いの情報が増えて、トーク番組やインタビューで役立つと涼も言っていた。
 だが、少年ーー御手洗翔太は、大吾の予想に反して仲良くしようとは言わなかった。その代わり、キラキラと期待に輝く目でにっこり笑い、こう言ったのだ。
「待ってるから、早く、僕と共演できるところまで来てね」
 ーーこいつは、なかなかの怪物だ。
 思わず大吾は笑った。それが少し凶暴な笑みだったことには、誰も気付かなかった。


私は実質アニメから入ったPなので、14歳コンビのことを考えたときに、出逢いの印象としてアニメ9話を前提にした導入の台詞が浮かびました。そこから2人の話を書こうと一度は考えたのですが、ユニット内のポジションは似ていても、性格がまったく異なるので、「この2人、友だちにはならなそう」と思ってしまいました。
大吾がカタギの人間との付き合いをどう捉えているのかはよく分からないけれど、少なくとも翔太は友だちを欲していない気がしたのです。仕事で共演して仲良くなった後に、友だちかも、と認める流れならまだ想像できるのですが……。
ということで結局、冒頭の台詞をメモって、一年以上寝かせていました。

それが急にSSになったのは、データ整理で、この台詞を削除しようとしたため。
翔太自身は「友だち」を必要としている気がなくても、「実力を認め合う同い年」という存在がいることは人生を豊かにするだろうと思い、「Jupiterの世界」以外では退屈そうな翔太に、人とのつながりを大事にしてくれる大吾と関係を持って欲しいと、強引に取り持ってしまいました。
巻き込まれた大吾には謝ります。正直、大吾はとんでもなく優しいので、こんな翔太でも良いかなと、甘えました。でも、サイスタに実装されている大吾のSSRアイドルフォトのうち2枚のチェンジ前イラストが、色々抱えている若いアイドルとの絡みだという点で、10代のアイドルの担当Pはみんな大吾に甘えたいのかも?
でも、そんなPたちの甘えを許してくれる大吾もまた、一人の怪物なのであるーーという気持ちを最後に込めました。

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