ロマサガRS リアム編よりED時間軸リアム、ダリアス、それからラゼムのくだらない小話。
大決戦祭ガチャのスタイル説明や「邂逅の記憶ーリアム編メモリーパネルー」イベントのパネルイラストを元にしたごちゃ混ぜ話です。特にオチはありません。
あと、この中の一人を引くために密かに天井したので、それに関しても後日別途報告します。
「すっかり平和になったよね」
出掛けに「パトロール」と称していたものの、ダリアスの視線は、騒動の種を見付けるためでなく楽しそうに笑う人々の顔に向けられていたから、同行するリアムも肩の力を抜いて散歩気分を楽しんだ。
新しい雑貨屋や喫茶店を見付けると、アーニャを連れて行ったら喜んでもらえるだろうかと考えたりする。昏睡事件を追っていたときには、パイロットとして文字通りあちらこちら飛び回っていたから、そんな風に街の変化に気付く余裕もなかった。それはリーダーとしてあらゆる業務に忙殺されていたダリアスも同じーーいや、リアムより酷かったようで、「あんな店あったか?」の台詞が三回目になった時には、さすがのリアムも吹き出してしまった。
「まぁ本当に、みんなに日常が戻ってよかったよ」
ダリアスは笑われたことに不貞腐れていたが、言葉には万感が込められていた。
「お前も、来週から大学に戻るんだろ?」
「うん……。クラヴィスの人員整理するって、アーサーに言われたし」
元々、バイト感覚で始めたパイロット業だ。
それに、異界の戦士たちとの冒険を通して、やりたいことも見つかった。いまは侯国大学に戻って、新しい目標のために勉強したい気持ちが強かった。
「人員整理というか、事件も解決したし、組織を維持する必要もないんだよなぁ。お前たちだけでなく、俺もこの先どうするか考えないと」
ゲラ=ハに頼んで船に乗っちまおうかなぁ、と言う声音が意外と本気の様子だったので、リアムは目をぱちくりと瞬かせた。
「クラヴィスなくなっちゃうの?」
自分がクラヴィスを抜けても、バンガードにいる限りはダリアスや仲間たちといつでも会えると信じ込んでいただけに、みんながどこかに行ってしまうと思うだけで、酷く寂しく感じた。
「じゃあキャンディに引き継いで貰って、街のパトロールだけやらせるか。そうしたらリアムも、気分転換したいときに手伝ってやってくれよ」
キャンディとあの仲間たちがバンガードの街中を練り歩く様を想像したら、それはそれで楽しそうだったけれど、治安を維持するより騒動を引き起こす確率の方が高そうだ。
そんな話をしながら回る中で、ふと、ダリアスはリアムに断ると、屋台のひとつに足を向けた。
「おばさん。キャンディのツケがあったら払ってくけど、大丈夫?」
呑気なパトロールもあったものである。
キャンディはダリアスの教育の甲斐あって「買い物」という概念を理解しているが、計算はできないので、お釣りを貰い忘れたり、逆に少ない額しか払わないこともある。思えば、リアムがパイロットになってこの事件に関わったのも、キャンディがお釣りを忘れて行ったことが切っ掛けだった。
ダリアスに応えた声は、二つあった。
「ああ、ダリアス。ちょうどよかった」
リアムもよく知る笑顔の店主と、もう一人。
「我が友、いいところに」
白い狼ーー五神獣の長ラゼムが、三本の尾をゆらゆらとご機嫌に揺らして二人を迎える。その優雅な姿を指して、店主は問うた。
「このワンちゃんの支払いもアンタに請求して良いって、本当かい?」
ーー思い掛けない質問に、リアムは眉間を押さえるダリアスと、鷹揚に頷くラゼムの二人を交互に見やった。
数秒の後、ダリアスが深い溜息を吐いた。
「お前……また金持ってないのか」
「えっ、また?」
どうやら初犯ではないらしい。
驚きのあまり口を挟んでしまったが、考えてみれば、神王の塔は崩壊して教団の教徒もいなくなってしまったのだから、彼等も生活に困っているのだろう。クラヴィスは退職するパイロットが希望すれば仕事の斡旋もしているが、リアムの分を五神獣に適用してもらえるよう、頼むべきかーー。
「第一、この前、当座をしのぐ金をやっただろうが」
「えっ、そうなの!?」
ダリアスがそこまで面倒を見ていたとは思わず、リアムは先程より更に大きな声を出してしまった。同時に、ライザがこのリーダーを「お人好し」と評していたことを思い出した。
渡された金がどの程度だったのか知らないが、もし散財して金がないのだとしたら、ちゃんと自分で働いた分だけ使うように教えなくてはならないだろう。と使命感を抱いたリアムだったが、どうやら事情があったらしい。
「あれは昨日、メロトセロイが街中で『どーん!』して壊した店の弁償に使いました」
ははは、とラゼムは笑ってみせたが、よく見ると目が笑っていなかった。相変わらず、彼の弟妹は彼の制御下にないらしい。それでも彼等の面倒を見ているのだから、長という立場は大変だ。もしかするとダリアスが金をやったのは、ラゼムのそんな姿に、リーダーとして組織の責任を負わねばならない自分を見たからだろうか。
獣の姿のまま、教祖の表情で嘯く。
「まあ、友が払ってくださらないなら、店主を私の信者にして寄進させるので構いませんが」
ダリアスが無言で獣の頭を叩いたので、リアムは慌てて取りなした。
「ラゼムのアビリティって、そんなにピンポイントな効果ないし、冗談だよ。ね?」
最後の同意は当人に向けたのだが、残念ながら神獣には伝わらなかった。
「救済がある」
お前たち、レイド戦では俺の魅了にかかって同士討ちしまくってただろう、と得意げに言うので、今度はリアムも黙ってその頭を叩いてやった。
ちなみに、金はダリアスが払った。
獣ラゼムがホームにいると聞ける「俺の信者になっても〜」の台詞から、いまさらラゼムが人間を信者にしようとする理由とは?と考え、金欠だからという事情を創作してしまいました(笑)。
オチに困ったらとりあえず物理攻撃のツッコミを入れるのは、令和の価値観に即さないかなぁと思ったのですが、書き手が昭和の人間なので、堂々と採用しました。
ラゼムの人称や口調の揺れは、ゲーム本編を参考に意図的に入れましたが、個人的には「俺」口調の方が書きやすいですね。
一章で、リアムが「キャンディのおつり」を渡しに来たのに、キャンディ本人ではなくダリアスが呼ばれるのを見ると、多分キャンディは買い物したいときに、ダリアスからお金を貰って出掛けているだけ(元々ダリアスのお金)なんだろうと思われます。神王の塔でも、ローブを買うより安いし面白いという理由で、自分を売り込んできた怪しい男にまとまった金を一括で渡すし、基本太っ腹ですよね。クーンに「ケチ」呼ばわりされたラゼムとは対照的なリーダー像だと思います。
いや、ラゼムにはキャンディと「どちらがダリアスから金を引き出せるか」で無駄に競って欲しいなと思っております(笑)。
「ボスに任せろ」スタイルの説明だと、キャンディがクラヴィスのリーダーを継ぐように言われているのですが、パネルイラストだとダリアスと一緒に船に乗っているので、結局ダリアスのくっつき虫を続けるのかな。
五神獣はどこか拠点を手に入れて落ち着いた方が良いと思うけれど、神王の塔を壊してしまったから、バンガードで暮らすのが無難でしょうね。いや、その前に彼等が復活&ロマサガ3世界に戻ってきた経緯をぜひ教えて欲しいのですが……。