「サガ エメラルドビヨンド」シウグナス編1周目エンディング後想定。唐突に始まります。こんなタイトルですが、将軍に捧げるSSです。

シウグナス編

 閣下、前提が違った可能性に気付きましたよ。
 ほら、閣下の生国の事変を収めたときに、最終皇帝がご自身のことを覚えてもいなかったと仰っていたじゃないですか。ええはい、2ヶ月は前の話を掘り返してすみませんけど、あの後思うところがありましてね。あれ、最終皇帝は覚えていなかったのでなく、覚えていられなかったのかもしれないと気付いたんです。
 いや、その2つは全然違うことなんだよ、チャンピオン。
 雲長やイルムランのときは、なんせ生きた時代が違うし、文明レベルも低かったから、記録が曖昧だったり不正確でも、そんなものかと思ったんだけどね、チャンピオンはあの王様や女王様と何度も面会したっていうし、私なんてあの女に殺されたのに、顔を合わせてもなんら反応されなかっただろう。黄一族だって、まぁ私自身も彼らについてこれといった記憶はないんだけど、ほんの数年前に失った同僚を一人も覚えてないってのは不自然な話だよね。
 それで、もしかするとすべての人から生前の私たちに関する記憶が失われているんじゃないかと閃いたわけだ。
 ああ、主任が私をデルタベースの人間だと認定したのは、あくまでベースの記録に照らし合わせての話だから。干渉を受けるのは人だけで、既にメモリー化した情報が消えるわけでないと考えれば、矛盾はしていないよ。
 といっても、これは私のオリジナルの考えではなくて、生前の私がフィールドワークで赴いたとある世界で、死とは「人の記憶から失われること」だと定義されていたのを思い出したといった方が正しい。肉体が死んでも、人々が覚えている限り、その人物は人々の心の中に生きている。でも覚えている者が誰もいなくなったら、そんな人物がいたという事実はなかったも同然になる。肉体の死の後、記憶の死という二度目の死を迎えて、人は真に死ぬわけだ。ほら、チャンピオンのところの王様や、私の一族から認識されなかったことも、雲長やイルムランに関する記録が曖昧なことも、人々の記憶から失われたとなれば説明がつくでしょう。
 そうだね。普通、死んだからといって記憶から失われるなんてことはない。でも私たちは、死者の復活という普通じゃないことを経験しているじゃないか。
 つまり、ブライトホームに死せる英雄として召喚されたときに、新たな生命と引き換えに「記憶の死」を与えられた可能性があるってことですよ。そもそも、なんの代償もなく人が蘇るなんておかしいよね。
 伯爵はどうなんだって? 人斬、キミ、良いところに目を付けるなぁ。そうなんだ、伯爵は本当に面白い存在でね、ブライトホームに召喚された以上、伯爵も肉体的には一度死んだんだと思う。でも伯爵という存在は、ヨミの住人の記憶から消えていなかった。私はこれが伯爵の「不死」の正体なんじゃないかって思うんだよ。この前伯爵がね、私たちは継続する生き物で、自分は連続するんだと言っていたんだよ。これも正にーー
 え、結論が見えないですか?
 つまり、最終皇帝の記憶から閣下のことが抜け落ちていたのも、ブライトホームという特殊な世界の仕組みが起因している可能性がある以上、閣下に関心がなかった証拠にはならないってーーいや、別に閣下を慰めてるわけじゃないですよ。そんな2ヶ月も経っていまさら。だいたい貴方、私に慰められても嬉しくないでしょう。そりゃあ、閣下ともそこそこ長い付き合いになりましたから、戦場でのお考えはともかく、日常のお考えくらいは読めるようになりますよ。いまだって、余計な推測を閃く暇があるなら早く「乱れ突き」を閃けって思っているでしょう。え、違いましたか。まぁそれならそれでいいです。
 それより、ブライトホームでの甦りは記憶の死と引き換えだという仮説と、伯爵の不死性が記憶の死を超越するという仮説に対して、伯爵の眷属がブライトホームで甦って記憶の死を迎えたとき、伯爵の記憶に残ったままでいられるのかっていう側面で検討したいんだけれど、誰か一回、死んでブライトホームまで行ってくれないかい?


サガエメは世界観が難解なので、自分では創作できないと思ったのですが、哲人氏がダラダラとお喋りしてくれました。

期待はなくても、最終皇帝と相対したのに一切反応を引き出せなかった事実に、将軍は内心ショックを受けたと思います。だから私としては戦士団みんな同じ境遇な気がするし、ブライトホームが諸悪の根源ってことにしようぜ!と励ますつもりで書いたのですが、なんせ哲人氏なので、自覚はないし、余計なことを言って終わりになりました。

状況説明は意図的に省きましたが、ヨミにて、戦士団全員で酒盛りでもしているのでしょう。将軍に語りかけているところは敬語、それ以外のメンバーに応答している箇所はタメ口、という形で私の脳内絵は全員集合しているイメージで書いたのですが、哲人の台詞を集めていないから解釈違いなところはあるかもしれません。そもそも、哲人が将軍をヨイショしているところが好きだと思ったのですが、ゲーム本編にそんな描写なくて私の妄想ですし……。
私が将軍のことを好きなので、戦士団のみんなも将軍を好きだと思い込んでる面はあります。2周目では将軍指揮でブライトホームを出ていく決断に乗るのだから、信頼があるのは間違いないと思うのですが。

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