• 2012年登録記事

小川糸著「食堂かたつむり」

【あらすじ】
恋人に裏切られ無一文で故郷に戻った倫子は、大嫌いな母に借金をして食堂を始める――

あらすじを纏めるのが難し過ぎ、諦めました。テーマと物語の盛り上がりが別なのが原因だと思います。
そしてあらすじと同じくらい、評価に悩む作品でした。
軽く読める良さや、現実感のなさがメルヘンチックで面白いと思います。色々な料理が出てくることを期待して読んだので、その点では満足できました。
ただ、エピソードが漫然としているので、恋人に全財産を持ち逃げされた話、失語症、食堂での出来事、母親との確執、と事件が色々あるのに全部バラバラの要素で、最初と最後で巧くお話が繋がった感が感じられないのが残念でした。
例えば、愛(恋人)の喪失による声の消失を、愛(母親)を得たことで取り戻したなら、多少まとまりがあったと思うのです。もっとも、倫子が淡々としているので声を失ってしまうほどの恋だったという印象も薄いのですけれどね。

豚のエルメスや、拒食症リスの描写が可愛い反面、人のキャラクターは総じて奇抜で、正直友達になりたくないなと思いました。
特に母親ルリコがエキセントリックでしたが、その娘である主人公・倫子も、確かに彼女の血を引いているな、と思える視野の狭い印象があったので、一人称小説なのに主人公がよく判らないという据わりの悪さがありました。

最後に……家畜と言ってもペットにしていた動物を、わざわざ屠殺して食べるという行為はビックリしましたが、責任をもって食べた点は良かったと思います。殺さなければ、そんな責任も生じないですが……。

九郎恋愛エンドを迎えました。

前回までの時点で、エンドを迎えていないキャラクターは九郎、敦盛、将臣の三人いました。
その内、敦盛、将臣は一章のやり直しが必要だと判っていたので、先に九郎を選択したのですが……実はその前提が間違っていたのでした。

というわけで、やり直しは四章から。
今回は勝浦まで行かず、速攻で怨霊を退治して本宮へ行くようにしたところ、間章で将臣が登場する新しい展開になりました。
これまで1つしかクリアしていなかった九郎の絆の関も順調に解放されて、安心しつつ五章へ。
しかし、明らかに奇襲イベントが発生するべきと思われる地点で、選択肢が生じないという、景時と同じ問題に遭遇してしまいました。
絆をこの時点での最大値まで上げても変わらず、メモでは敗北時の台詞を思い出すようにとあるので、あえて一旦一周目の敗北ルートも辿ってみたのですが、フラグは判らず、五章の最初の選択肢や会話する相手を変えてみたり、九郎に技を習得させてみてもNG。
が、何度も試行錯誤しているうちに、メモの記述に「弁慶が春に福原に行っている」ことが必要だと追記されました。
……つまり、九郎攻略の場合も一章に戻ってやり直しだったわけですね!(苦笑)

必要なイベントをサクサクとこなして二章まで一気に消化。
ところが、前回プレイで過去の章に戻ったときと異なり、後半の章が消失しなかったので、五章に戻ってみたところ、前述のイベントで選択肢が発生するようになりました。
過去の出来事を変えても地続きの未来以外は変更できない「タクティクスオウガ運命の輪」のW.O.R.L.D.とは、システムがちょっと違うんですね。
ここで引っ掛かった以外は、スムーズにエンディングまで進めました。
思ったよりアッサリとしたお話でしたが、将臣の正体が皆にバレつつも和解するのは良かったです。
現代組が全員帰還でき、おまけエピソードで仲間との別れもできる、隙のない終わり方でした。
また、この展開を観る事により、弁慶やヒノエのルートで終盤に将臣が登場しないのは、二ノ尼や安徳天皇を南へ連れて行っていたのかな、と思えるようになりました。

沢村凛著「瞳の中の大河」

【あらすじ】
平民の少年アマヨクは、大貴族である叔父への恩返しの念で、内戦で乱れる国のため軍人となる。次第に功績を上げ英雄となったアマヨクは、内戦で理を得る貴族たちの思惑を脱し、野賊を殲滅しようとするが――

ライトではない、骨太なファンタジー物語。
政治と密着した軍事活動などは面白かったのですが、国の為と言う大義名分で周りを省みない主人公アマヨクに共感できなかったので、そこは減点でしょうか。
アマヨクに限らず、どのキャラクターも心理描写がほとんどないので、読者が想像して補う必要がありました。
それから、物語の最後ではアマヨク・テミズの人生を描いた物語だと語っているのですが、前口上がそうなっていないので、収まりが悪い気がしました。
とは言え、素晴らしい構成のお話でした。

物語の始まりで登場する3人のキャラクターの描き方から、この3人が出逢って物語が大きく動き出すのかと思いきや、最後までアマヨクとメイダンは遭わないという大きなパターン外しで驚きました。
格好良いと思ったのはセノンですが、無気力で人並みなメイダン殿下が、物語の最後に大きな決断と勇気を見せるのが一番感動した点かも知れません。

景時恋愛エンドを迎えました。
本当は、次は敦盛の予定でしたが、フラグを立てる為には一章へ戻る必要があるようです。そこで、あまり大幅に戻らなくても済む景時に狙いを変えて、間章からやり直しました。

が、景時エンドへの道は、素直に一章に戻った方が早かったと思うくらい、やり直し&試行錯誤する事になりました。
期待していた通り、面倒くさい人だった!と言えますね(笑)。

やり直しを強いられたのは、まず七章「屋島は赤く染まる」です。
今回の屋島では、これまでは話題に上がらなかった逆艪が登場。史実が微妙に巧くミックスされていて面白いですね。
ゲーム中のヒントである「メモ」が“景時を1人にするな”と示唆していたため、望美が景時と一緒に逆艪の取り付けを待ってから進むようにしたところ、源氏が総門から敗退して景時が死ぬという運命に行き着いてしまいました。
ということは、望美1人が残るのでなく、仲間と一緒にいる必要があるのだろうと考え、今度は景時に逆艪を諦めさせたところ、従来通りのシナリオに入り、終章「壇ノ浦決戦」が出現しました。
どうも、メモの意味を捉え間違えていたようです。
個別ルートが出現しないまま終章に至っては仕方ありません。もう一度七章を選択し直し、再度逆艪の取り付けを待ってから進んだところ、新しい選択肢の出現により総門で反撃できるようになり、遂に景時ルートに進む新章が出現しました。

個別ルートに入ってしまえば、もう後は一本道……と思ったのですが、今回はそれも間違いでした。
というのも、八章「血塗られた手」冒頭のイベントで、景時から一緒に逃亡することを打診されたのですが、選択肢を与えられぬまま望美が断ってしまい、景時が失踪しました。
――え? どういうこと?
なにが起こったのか良く分からないまま、もう一度八章を選択。
会話が始まる前にある2回の選択肢(2択×3択)をパターンを組み替えて選んでみましたが、やはり展開は変わりませんでした。
此処に至り、イベントはこなして来たけれど、絆が足りないのかも、と思い至り、一旦四章に戻って戦闘を繰り返してみました。ひたすら景時と一緒に戦い続け、絆が高まったことを確認して、再度「時空跳躍」したところ、四章をクリアせず跳躍した影響で、五章以降が消失してしまうことが判明しました。
今まで、過去に戻ってから未来に飛ぼうとしたことがなかったので、知りませんでした。
また四章から七章までをやり直すのが億劫で、運命上書きをしないことにしたところ、当然四章に戻って絆を高めたという行動もなかったことにされ、絆が戻ってしまいました。
無駄な作業をしてしまったことにガックリしつつ、絆を稼ぎ直そう、と思ったら、ここで初めてのフリーズまで発生。
景時の面倒臭さはフリーズまで起こすのか!と思わずニマニマしてしまいました。
その後、気を取り直して七章を再プレイした後の八章で、ようやく景時の打診に対する選択肢が登場。景時を叱咤激励した後は、問題なく最後までスムーズに進みました。
(でもどうしても気になって「一緒に逃げる」バッドエンドは確認しました)
それにしても、もし景時が「魔弾」を習得してなかったら、そこでまたやり直しが発生していたんでしょうかね?

こうして迎えた恋愛エンドは、京に残るという、景時にとって一番幸せだと思える終わり方で安心しました。
先に迎えていた景時十六夜エンドでは、家族を置いて現代に来てしまって良かったのか気になっていたのです。
個別ルートでの展開は大体想定通りでしたが、ラストバトルに攻略対象が参加しないというのは斬新だと思いました。勿論、景時は別の場所で一緒に戦っていたようなものだと判っていますけれどね。
面倒くさい人だけれど、一番普通の感性を持っていて、最後はハッタリで大博打に打って出る辺り、格好良かったなと思います。

夏川草介著「神様のカルテ」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
内科医・栗原一止は、一般診療から救急医療まで担う地方病院に勤務し、連日過酷勤務をしている。ある日、大学病院で最新医療を学ぶよう誘われ、進路に悩まされる。しかし看取った患者から「病気は治らなくても、病んだ孤独を取り除いてくれた」という感謝の手紙を受け取り、地方病院に残ることを決意する。

奇人変人ばかりだけれど、悪人はいない、優しいファンタジーの物語。
主人公・一止の古風な語りに反して、読み易い文体で、さっと読めました。
個性的なキャラクターと、ウィットの効いた会話が楽しく、面白かったです。

それにしても、こういう物語を読んだり聞いたりする度に、医療現場は大変だなと思わされます。
ただ、一止は患者にとって「良い医者」かも知れないけれど、ここまでズタボロになって働かなければいけない状況は問題だし、主人公であれば一止もこれを当然だと思わず、改善のために動ける人物であって欲しいように思いました。