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五十音順キャラクター・ショートショート【ひ】
→ルールは2012年12月17日記事参照


 ヒーローになりたいわけじゃない。恥ずかしい自分になりたくないだけだ。
 だから守るものは2つだけ。
 命と約束。
 そのどちらも背負っている時に、逃げ出すことなんて有り得ない。
 ――負ける気もしなかった。

「そうやって行く先々で悪党ぶちのめしとるから、ヒーロー扱いされるんや」
 隣で馬を歩かせる妹は、なにが気に食わないのか、顔を膨らませてそう言った。
 謝礼より経費が多いだとか、売り物の出番がないとか、これまでも散々文句を言われたが、これは少し違うらしい。その証拠に、しばらく待っていても、彼女の口から兄の行動を改めさせる言葉は出てこなかった。
 あれこれ言いつつも、“ヒーローみたい”な兄は、彼女にとって合格点であったらしい。
 けれど、なにをおいても一番に妹のことを守ってやりたいと思っている時点で、本物のヒーローにはなれそうになかった。

ヒーローなんかじゃない
……ヒッテル(アニメ「覇王大系リューナイト」)


カッツェが不機嫌なのは、「兄ちゃんはウチのヒーローなのに」という文脈ですよ。
お互い気付かないだけで、実はシスコンとブラコンな二人でした。

五十音順キャラクター・ショートショート【は】
→ルールは2012年12月17日記事参照


 箱の中には、希望はおろか、絶望すらなかった。ただ空白で埋め尽くされた孤独がある。
 箱の中と外の二人を、この孤独感が繋いでいた。
 いつかまた箱が解き放たれるまで、永遠に。

 そして箱の中には、彼女への愛が残された。

箱の中に
……ハーメル(アニメ「ハーメルンのバイオリン弾き」)


久し振りに、書いた後で文章を削りまくりました。
一切説明のない、不親切設計です。

TVアニメ版は「ギャグ漫画原作からギャグを抜く」という、野心的と賛美すべきか狂気の沙汰と評すべきか悩ましい部分が好きでした。
アニメ化の例としては、失敗作だと思います。でも原作よりワクワクしながら、翌週の放送を待ってました。そして、最終回放送後はバッドエンド&謎の一話回帰と旅立ち回避オチに、悶々としました。

五十音順キャラクター・ショートショート【の】
→ルールは2012年12月17日記事参照


 呪われた悪魔の子か、無垢なる天使の子か。
 この子たちはどちらにでもなれる。

 精霊は、妹であり母でもある大樹に幼子たちを託した。
 愚かしくも愛しい子供たちは、今度こそカーラーンの肉体を捨て、罪に縛られない自由な魂として生まれ変わる。
 彼らがこの先いかなる者になるかは分からないし、もう間近く見守ることもできないけれど、慈しみに満ちた大樹の世界ならば、きっと悲劇は起こらない。
 いつか、輪廻の末に二人の魂がカーラーンへ戻ることもあるだろう。その時は、二人が天使になれるような世界になっているよう、精霊は心から願った。

Nobody knows their future
……ノルン(ゲーム「テイルズ オブ ファンタジア なりきりダンジョン」)


リメイク版未プレイのため、ゲームボーイ版準拠です。
氏より育ち、最初から悪い人はどこにもいない。その世界観は、正義に対するのも正義だったファンタジアの続編らしいと思います。
子供向けの語り口と優しいテイストで包まれた、物凄く怖い話なんですけれどね。
このゲームボーイ版と小説版が好き過ぎるため、リメイク版はあらゆる変更点を批判してしまいそうで遊べません。

五十音順キャラクター・ショートショート【ね】
→ルールは2012年12月17日記事参照


「ねぇ、これただの鋼の剣でしょ。3000ゴールドなんてぼったくりじゃない!?」
 声を荒げた客に詰め寄られているのに、カウンターに腰かけたまま店員は微笑んだ。
 有名店だけに、時折こういう手合いがいるのだ。
「はい、お客さま。そちらは鋼の剣でございますが――」
 それも、全国の武器屋が2000ゴールドで売っている量産品に、この店の刻印を掘っただけの代物だ。ちなみに、刻印代は一本あたり10ゴールドとなる。
 しかし――
「他店にはない、勇者さまがお使いになっているのと、同じ型でございます」

 お客様に満足を与える付加価値を。
 著名人とのコネを活かした商品作りで、一都市の武器屋から世界有数の商社となったトルネコ・コーポレーションでは、創設者の経営ブレーンだった妻ネネの教えがいまも社是となっている。

ネネの武器屋経営術
……ネネ(ゲーム「ドラゴンクエストIV」)


トルネコの店って、他から仕入れて売るだけでしたよね。
たぶん、選ばれし者たちの1人であることを大いに生かして、それまでこの世になかったブランド戦略を取ったのではないか、と思っています。
で、ネネさんと言えば銀行(預り所)を始めてましたよね? そういう所からして、ただ夫の店を預かるだけに留まらない、かなりの先見性の持ち主だったろうと思います。

五十音順キャラクター・ショートショート【ぬ】
→ルールは2012年12月17日記事参照


「盗人だ。あの男は盗人なのだ」
 男は娘の智謀を知って以来、数多い子供たちの中でも特に彼女を可愛がり、機嫌の良い時は彼の王のことをこう言って教えた。
 確かに王はフィニー王家の血筋でギュスターヴの名を持つ者。だが王の証を持たず王家を追われた後、異母弟を殺し、数多くの臣民の血を流して、玉座を己の物とした。
 王の振るう鉄の剣が砕いたものは、軍勢と術世界だけでない。ファイアブランドによって保証されていた王の絶対性も、粉微塵になった。
 アニマのない王が認められるなら、誰でも王になれる。
 幼い娘がそう不思議がると、男は濃い笑みを浮かべた。
「最初にそれを行った者は盗人であっても英雄と呼ばれ、二人目は梟雄と呼ばれる。その覚悟がない奴は盗まぬのだ」
 だが娘は言葉にされなかった父の声を、確かに聞き取った。

 ――俺は違う。盗む。この時代に男として生まれたからには、盗んでやるぞ――

 人から謗られるとしても、覚悟なく生きる愚者に比べなんと気高いことか。
 このときヌヴィエムは、生涯を父の娘、盗人の娘として、顔をあげて生きようと思った。

盗人の娘
……ヌヴィエム・ドラングフォルド(ゲーム「サガ フロンティア2」)


色々暗躍するのですが、実はあまり印象がない女性です。彼女の父親であるカンタール候も同様のため、イメージ違いでしたら申し訳ありません。
物語としてはギュスターヴ編の方が好きですが、自分で操作する箇所が極めて少ないので、どうも記憶力はウィル編に割かれてしまったようです。

もしヌヴィエムで書き上がらなかったら、ヌート・ガンレイ総督@スターウォーズしか候補がいませんでした。助かった……。