五十音順キャラクター・ショートショート【れ】
→ルールは2012年12月17日記事参照
冷静だった。
――と自分の振る舞いを採点し、安堵したときだ。
「お前でも、王妃様には緊張するのか?」
彼に見破られていたと知って、レイシスは秘かに驚いた。
王宮内でただ一人、レイシスのことを友とかライバルとか呼ぶその男は、衛兵長でありながら剣より花束を持って歩いていることが多い、典型的な貴族である。今日は警備を兼ねているのか、立派な剣を腰に差していたが、藁束しか斬ったことがない剣が何の役に立つだろう。
ある意味で彼は、レイシスが思う“インフェリアの平和”を証明する存在だった。呆れたり苛立ちながら、ほっと安心もさせられる。
考えてみれば、彼の前では気を抜いて、心の鎧を外していたかも知れない。
ならば彼が見破ったのではなく、自らが告白していたようなものだ。
「そうだな、緊張はするさ」
仕方なく、レイシスは笑って認めた。
でも、その緊張が心の奥に潜む憎しみを抑える為であることは、墓の底まで持っていく秘密だった。
零下の憎悪
……レイシス・フォーマルハウト(ゲーム「テイルズオブエターニア」)
本当はロエン様に「ろ」のお題で登場して頂く予定でしたが、その前の「れ」で苦戦して、TOEを使ってしまいました。
レイシスは、母親を愛していたようだから、本心では王妃を憎んでいたのではないかなと思います。ただ、復讐しよう等と考えるタイプではなかったので、ただ何時までも消化できない憎悪があるだけ。
レイシスみたいな出来過ぎた人物は書き難いので、ロエン様を書きたかった(苦笑)。