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映画「レ・ミゼラブル」を観て来ました。
http://www.lesmiserables-movie.jp/

東宝ミュージカル版の感想は、2011年4月23日記事参照
原作は子供時代に読んだ筈ですが、ほぼ記憶がありません。恐らく短縮版でしょう。
更に最近思い出しましたが、悪名高い(笑)1998年のリーアム・ニーソン主演版「レ・ミゼラブル」も観ていました。

お金を掛けて作られているだけあって、見応えも聞き応えもありました。
曲順が入れ替わっていたり、幾つかの要素が原作準拠になっていましたが、ほぼ舞台版に忠実な内容だったと思います。
冒頭、囚人たちが「囚人の歌」を歌いながら船の綱を引く光景で、舞台とは違う映画らしいスケール感を感じさせられました。また、鳥瞰から街を観るアングルなどは、やはり映像ならではの演出ですよね。
でも何故でしょう、制約の多い舞台の方が奥行きと広さを感じると思いました。視界がスクリーンで四角く切り取られているからでしょうか? 切り替わりが激しいカメラワークとか、人物のアップが多いのも、私の好みとは合わなかったです。
元々非常に長い話を納める為に、ちょっと余韻がなかったのが残念かな。

それから、本作を語る時に外せない、台詞を歌で綴る本格ミュージカルであると言う点について。
ミュージカル好きですが、映画だとやはり不自然かな、と思いました。特に、「バルジャンの独白」のような心情を吐露するシーンで、教会の中をウロウロするバルジャンにもなんだか不自然さを感じました。リアルな映像が付くことで、逆に妙な気がするようです。
面白いもので、英語の歌を聞きながら字幕を見ていると、結構違うことを言ってると気付かされました。ミュージカル訳を参考にしていたようですが、日本語で歌う為に敢えて言葉を削ぎ落として意訳してる箇所が多いので、もう少しゼロから訳しても良かったのでは。また「心は愛に溢れて」などの二重の歌が重なるシーンは、字幕が縦横で分けて欲しいと思いました。

この映画では、バルジャンという人物の魅力が分かりました。
逆に、ジャベールは私の解釈よりちょっと感傷的に過ぎるかな。徽章をガブローシュに付けてやるシーンは違和感がありました。
コゼットは何もしないしどころのない役だと思いますが、可憐で可愛いだけで説得力がありました。
学生たちは、一気に出てきて名前も呼ばれないため、個別認識が難しかったです。アンジョルラスすら、革命が始まった後に2回呼ばれるだけなので、原作も舞台も知らない観客には認識されなそう。
アンジョルラスの最期は原作展開に変更されていたのですが、アンジョルラスとグランテールがそれまでに1個人として魅力は疎か個性を見せていないため、感動に至りませんでした。
テナルディエ夫妻は軽妙ですね。嫌いな役ですけれど、作品における役所としては凄く理解できました。

帝国劇場にて「レ・ミゼラブル」17:00回観劇。
http://www.tohostage.com/lesmiserables/

本日のプリンシパルキャストは下記の通り。
バルジャン:別所哲也、ジャベール:石川禅、エポニーヌ:平田愛咲、ファンテーヌ:和音美桜、コゼット:稲田みづ紀、マリウス:原田優一、テナルディエ:駒田一、テナルディエの妻:阿知波悟美、アンジョルラス:阿部よしつぐ。
子役は、コゼット:斉藤、エポニーヌ:清水、ガブローシュ:加藤でした。

原作は小学生の時に既読。
ですが、まったくと言って良いほど内容を覚えていません。読んでいて面白かったと言う記憶もなく、どちらかと言うと読み終えねばという義務感で読んだ、苦い印象があります。
そんなわけで、ミュージカル好きを名乗るなら当然押さえておくべき作品だとは思いつつも、子供時代に抱いた苦手感を引きずって、今日まで未見でした。
観劇意欲が湧いたのは、テニミュ初代メンバーの阿部よしつぐがサンボ(=アンサンブル)からプリンシパル(=役付き)に昇格したと知ったところから。そこに現演出での公演はこれがラストだとか、サンボで絵里(元宝塚・嘉月絵里)が出ると言う話が追い風になり、今回のチケットを取ってみました。
結果としては、「ミュージカルを観た!」と言う満足感に溢れた舞台でした。
バルジャンの物語と、学生たち(ABCの友)の闘争運動の物語の2軸と言う印象で、その二つが合致する2幕のバリケードは熱かったです。凄い早い展開の中、バリケードはかなり尺を割いてましたので、元々ここが見所なんでしょうね。

以下、役の話。
バルジャン@別所は、分かっていたことですが少々歌に難あり。あの体格の良さから、太い声を期待してしまうので、消化不良を感じます。しかし演技は良かったです。
マリウスの無事を願うのも、感謝するのも、生かそうと尽力するのもコゼットの為=自分の為だから偽善ではあるのだけど、罪人であることを自覚しているので納得できました。
ところでバルジャンはジャベールが待ってるはずの橋に戻らなかったの?
ジャベール@石川は、まず字余りなフレーズが多くて大変そうでした。元詞でもかなりの早口言葉ですよね。
最初は思ったより凄みがないように思いましたが、老いてからのジャベールは迫力でした。しかし、行動は意外と間抜けですよね。黒服のフランス人と言う点も含めて、スカーレットピンパーネルのショーヴランを彷彿とさせられました。
投身シーンはどう演出するのかと思ったら、橋がセリ上がっていって落下を表現したので、膝を打ちました。あの落ちる演技は自分ではやりたくないなぁ。
マリウス@原田は、声が甘くて良かったです。生き残ったマリウスがカフェで一人歌うシーンは秀逸でした。
エポニーヌ@平田も素敵でした。役自体もかなり原作より膨らませているような気がします。親が小悪党で、孤独感を持っている娘と言う設定は、モーツァルト!のコンスタンツェに似ているけれど、彼女より真っ直ぐ且つ片想いなので女性ファンも多そうな役ですね。
対して、コゼット@稲田は余り良いところがないと感じました。全編歌で綴る作品で、歌声が弱いのは辛いですね。
ファンテーヌ@和音は、最初キャラが合ってないような気がしましたが、臨終シーンで仰向けに横たわったまま歌う技術には感心しました。二幕での出番は正に聖女だと思いました。透明感のある声がこの人は本当に凄いですね。
テナルディエ夫婦はナンバーで手拍子が入るほど客席に人気でしたが、御存知の通り麻生が嫌いなタイプのキャラなので、登場されると大人げなく不愉快でした。客が役に対してこれだけ嫌な奴だと思えるのは、演技として大正解……なのかな。
で、目的だったアンジョルラス@阿部は予想外に美味しい役で吃驚しました。学生たちの闘争のリーダーと言う大きい役だったんですね。
学生らしい青さに、自分の信念を貫こうとする堅さ、リーダーの自負があって素敵でした。ただ、もっと伸びやかな声のイメージだったので、ところどころ力んでるような歌い方が気になりました。

ガブローシュ@加藤は、子役の中で断トツの巧さ。小さくても素晴らしい役者でした。私は「天地人」は観ておらず子供店長と言うイメージしかなかったのですが、人気が出るのも納得ですね。
恐ろしいことに、台詞や動きが出来るだけでなく、自分の役のポイントが分かっているようで、目立つべき所はしっかり前に出て、そうでないところは登場していても目立たない程度に引いているところも、天才的なセンスを感じました。
最期、銃弾を詰めて投げた袋が今日はバリケードの上に届かなかったことにグッときました。あれは、届かない方が余計悲劇的で良いですね。ずっと眼下の袋に手を伸ばしてる学生にも哀しくなりました。
リトルコゼットは、小さくて可愛かったけれど、調子外れに聞こえる歌と、棒読みの笑い声に思わず苦笑い。子役って、こんなもんですよね。

サンボで、凄い良い役だなと思ったのが、バリケードの時に赤いバンダナを巻いている学生。役から考えるとグランテール@土屋研二でしょうか? 瀕死のエポニールに最初に気付いて、ギョッとして動きを止めた後、仲間たちに声を掛けていくところや、ガブローシュを褒めるところ、アンジョルラスに闘争の是非を問うシーンなど、目立って美味しかったですし、演技も惹き込まれました。
この作品は、男性陣サンボの方が、学生役がある分かなり美味しいですね。
で、肝心の絵里は、役に出ていた「かつら屋」と言うのがどのシーンで出てくるのか分かっておらず、一幕の間はまったく確認出来ませんでした。結局、二幕の女たちだけのシーンで発見しました。贔屓目たっぷりですが、女性陣サンボでは抜群に巧かったと思います。退団後しばらく動向が不明でしたけど、パワーアップしたのでは?

決して明るくはないお話ですが、最後はマリウスとコゼットの二人の未来を明るく感じさせてくれるので、良い気持ちで劇場を後に出来ました。
現演出では最後の公演と言う事で、今後はどうなっていくのか、ちょっと気になります。