風野真知雄「幻の城 大阪夏の陣異聞」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
1614年、真田幸村は、大坂方の総大将として八丈島から宇喜多秀家を連れ戻す。秀家は正気を失い、家康への憎しみのみ残していた。明石全登の軍に陣借りした秀家は家康に迫るが、後一歩の所で逃げられ、遂に大坂城は落ちる。秀家は秀頼を鹿児島へ逃がし、徳川倒幕の布石を置くと八丈島へ戻っていった。

予習を逸脱して、段々好きな武将小説に移り始めました。
と言う事で、三成の立場から見た時に好人物過ぎて気になった、宇喜多中納言秀家です。
と言っても、粗筋からお分かりの通り、これは大阪の陣に秀家が参戦すると言うif小説です。但し、豊臣滅亡の結末は変わらないので、歴史の中の創作エピソードとしてすんなり読めます。秀家の気狂いは、やや都合の良い面はありますが、強烈な個性となって物語に勢いを生んでいると感じました。
真田十勇士については全く知識がありませんが、冒頭の小競り合いで有名キャラ佐助を殺したのは、思い切った手法ですね。先にどんな展開が待っているのか、期待させられました。
ただ、豪姫に似ていると言う設定の侍女おのえが惨殺されることで、根津甚八は秀家への反発を持つのかなとか、細かいエピソードの繋がりを色々考えていましたがそうはならず、ちょっと個々のシーンの繋がりが悪いようにも思います。
とにかく、秀家を大坂の陣に参戦させる、と言うアイデア勝負のお話ですね。
実際、大坂の陣で淀殿・大野を叱り飛ばせる真っ当な総大将がいたら気持ち良いだろうなぁと思います。秀頼を殴り付ける下りは正直スカっとしました。
また、「家康の人生観や戦い方には美しさがない」と言う秀家の叫びには、色々頷かされました。滅びる道だと分かっていて豊臣に殉じた人たちが、家康を奉じなかった理由を見たような気持ちです。
それにしても、「群雲、関ヶ原へ」と同様、徳川を倒す布石は島津に与えられるんですね。なぜ長州(毛利氏)は無視されるのだろう……と考えると、輝元に反骨精神がないからかなぁ。
ラストは虚しさが漂う、不思議な味わいの小説でした。

ところで、この本を読んでから知ったのですが「八丈島より泳いで参った!」と言うネタがあるんですね(笑)。

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