- 分類読書感想
司馬遼太郎「軍師二人」
戦国時代の男と女を題材にした短編8作収録。
マイナーな人物を取り上げていたり、戦国物にしては珍しい女性主人公の作品も多いです。
表題作「軍師二人」は、大坂の陣の後藤又兵衛と真田幸村を扱った短編で、これだけはメジャー武将を取り上げています。幸村はまだしも、又兵衛は「軍師」と言うイメージでなかったのですが、物腰柔らかな人だったと描かれていて、少し観る目が変わりました。
最終的には二人共が散って行く話なので、無常観に溢れています。でも、兵法者としては二人とも自分が正しかったと思って死んでそうなので、幸せかもしれませんね。
しかし何より強烈な教訓だと感じたのは、物事のリーダーとは、プロジェクト内の意見を纏めるのではなく、どちらが最善か判断しなければいけないと言うことです。大野治長も淀殿も器量がなかったのに上に立つから、自ずと負けたのですね。
表題作以外で、個人的に気に入ったのは、下記の2作です。
・侍大将の胸毛
渡辺勘兵衛の話。不勉強で、この武将を初めて知りました。増田長盛にこんな面白い武将が仕えていたとは! 近江出身大名は、猛者集めが趣味なのかしら? こういう人材を関ヶ原に連れて来てみたかった、と思います。
で、彼を勧誘するのが藤堂高虎ですが、勘兵衛からも家臣からも散々に言われるので、段々可哀想に思えて来ました(笑)。権力者の間を巧い事立ち回った男と言うイメージの高虎ですが、このヘタレっぷりは結構好きかも。
・割って、城を
「へうげもの」の古田織部の静かな狂気を感じる味わい深い作品でした。
経歴を知らなかった事もあり、ちょっと意外なオチがあって、それ自体もまた織部の創作物のようで深いと思いました。