最相葉月「東京大学応援部物語」

「物語」と題されているため、小説かと思って読み始めたのですが、ルポルタージュでした。
万年最下位、連戦連敗の東大野球部を、凄まじい統制と訓練をもって応援し続ける応援部。そしてその中にあったドラマが垣間見えて面白かったです。
「応援する人間は、応援される人間より強くなければならない」と言う言葉が、個人的に重かったです。

私も、大学時代の一時、文化系でありながら並の体育会以上に統制が厳しい活動に所属していました。
統制の意義は分かっていたし、体育会系のノリ自体は嫌いでなかったのですが、尊敬できない先輩にも絶対服従しなければならない苦痛や、理不尽な「しばき」に対して理屈がつけられず、責任を果たした段階で辞めてしまいました。
この本を読んで、もし辞めずにいたら、また違う人脈と人生を得ていたのだろうかと考えさせられました。反面、辞めて活動を一つに絞ったから今の自分と友人がいるのだと考えると、人生をやり直しても同じ結論だったと思います。

比較的淡々としたルポは、平成14年秋神宮での東大勝利試合と、一人のリーダー部員の退部騒動でドラマに変わっていきます。
笠谷圭司が応援部に戻って来るのは出来過ぎていて、特に彼の過去や心理など創作的のような印象もあるのですが、彼が復帰した切っ掛けになる手紙が、差出人はそこまで深い意味で送ったわけでない辺りが、いかにも現実で、でも人の関わりとは、そんななんでもない事だ、と思いました。
ちなみに、年齢がバレてしまいますが、自分の大学時代と完全に被るので、知った名前が出て来る度に一々反応してしまいました。

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