有川浩著「シアター!」

バックヤードもの、且つ演劇もの。その時点で面白い要素しか見当たらない!と思った通り、エンターテイメントとして面白かったです。
個人的には、春川司というキャラクターの勝利だと思いました。
考えてみれば、本作のように主人公がデキル社会人である物語は、なかなか見当たらない気がします。言うこと成すこと理に適っていて頷けるので、気持ちよく読めました。互いにブラコン気味な巧との関係性も良し。
そうして家族愛要素が強い分、恋愛要素が軽いのも秘かに嬉しいのです。
久し振りに、続刊を読みたいと積極的に感じる作品でした。

ただ、折角の劇中劇が断片しか明かされず単体では楽しめない上、その断片自体が面白そうに感じられないのは残念です。また、「重要小道具が舞台上にない」という箇所で緊張感がなく、折角のアドリブも乗り切った感を受けませんでした。
……そうやって改めて考えてみると、演劇ものとしての面白さは薄いのかな。

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