五十音順キャラクター・ショートショート【い】
→ルールは2012年12月17日記事参照
いつもの道を弾むように進む。
一歩、白い砂上に跡が残された。
海に囲まれたこの小さな国では、どこまで行っても微かに磯の匂いがした。
この国に移住してくる仲間や人は時折不平を言っていたけれど、彼はそれが嫌いでない。
海は万物の生まれ故郷であり、いつか還る場所だ。形のあるものもないものも、生き物が作ったあらゆるものはやがて海に飲み込まれ、消え去っていく。
小さな彼の悩みや涙など、きっとひとつも残りはしない。
彼は振り向いて、通ってきた道に眼をやった。
彼が道に刻んだ足跡は、もう存在しない。ただ、潮風が通り過ぎた気配があった。
いつかすべては海になる
……いむ(ゲーム「ワールド・ネバーランド〜ナルル王国物語〜」)
いむはワールドネバーランドのマスコットキャラクター。
和菓子「すあま」のような造形の「いむ」が、こんな哲学的な生き物だったなんて!
――と皆さま驚かれたことでしょう。私も、もっとほのぼのとした、いむと移住者のお話になることを想定して書き始めたので、大変驚きました。
ちなみに、このお話で取り上げた足跡の件は、「歩みにそって足跡が残り、一定時間が経過すると消える」という、お約束的なゲーム仕様のことです。
書き終わってから、いむは足跡が付かなかったかも……と思ったけれど、確認せず突き進みます。