五十音順キャラクター・ショートショート【つ】
→ルールは2012年12月17日記事参照
月の女帝への反逆――
弟の愚かな選択に目眩がしそうだった。
「退くのだ、ゲッコー」
ここで退かなければ、もう後戻りできない。だが今なら、自身の権限で揉み消してやれる。
彼は弟を理解できないまでも、よく知っていた。まさか、本心からこの枯れた星を欲しているわけがない。主の千年の眠りを守る退屈さに飽きただけだ。
そして、その堪え性のないところこそ、彼が弟を唾棄する所以だった。
不意に、ゲッコーは呵々と笑い出した。
「嬉しいゼ」
考えの読めない隻眼に、愉悦の光が閃く。
「姫様がいない今、ようやく兄キと闘えるんだからな」
ツキカゲは絶句した。
月星人はみな等しく女帝の民であり、野蛮な地球人のように同胞で戦うことはしない。ましてや、二人は女帝の右腕、左腕と称された将だ。
女帝をまだ姫様と呼ぶくせに、裏切ってまで月明かりの名を分けた兄と闘いたいと言うのか。
だが――自分の左手で右手と闘うバカはいない。そんなことも分からぬ愚弟を、ツキカゲは哀れに思った。
月明かりの決闘
……ツキカゲ(漫画「YAIBA」)
ウサギのくせに格好いい月星人兄弟。偶然見たアニメでゲッコーに惚れ込み、ゲッコーVSヤイバの話が収録されている巻だけお小遣いで買いました。
思えばこの幼き日に「ケモナー」になったんですね、私は……。
本編のゲッコーはカグヤ様の命令には割と従っていたので、あの反抗期真っ只中な性格は兄貴へのコンプレックスじゃないか?という気がします。
ツキカゲさん、たまには弟に優しくしてあげて!
もともと、月星人兄弟はゲッコーの方が強いと思っていましたが、このSSを書くにあたり、魔王剣なしならツキカゲの方が強いのかも、と気付きました。
だって、ゲッコーの反逆はカグヤ不在時期に起きて、制圧されてるんですよね。それに、月星人の合体能力を活かすには、知能も必要だと思います。