五十音順キャラクター・ショートショート【ゆ】
→ルールは2012年12月17日記事参照
雪が降る中を、和装の娘はゆっくりと歩いた。
そんな格好では御寒いでしょう、と友人が半ば強引に嵌めさせた大きな手袋を、時折落としては拾い、また落とす内に、手袋はもとより白い指先まで雪にまみれ、やがてじっとりと濡れた。
その変化を面白く思って、彼女は頬を緩めた。
氷に閉ざされた生国では、雪が溶けることはない。千年も万年も永遠に積もり続ける。そこに住まう氷女の心が硬く凍っているのと同様に。
だが生命力に溢れた人の世に降る雪は、温かく儚い。融けて、消えてしまうほど。
そんな人の世の温かさで、雪の名を持つ自分の心も融けるだろうか。
期待を込めて、雪菜は濡れた手袋を抱き締めた。
雪解け
……雪菜(漫画「幽☆遊☆白書」)
幽遊白書は、私の子供時代に爆発的な人気を誇った漫画。
世代がバレるなぁと思いながら書きました。