平田オリザ著「幕が上がる」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
弱小高校演劇部は、東京で演劇をやっていたという新卒の美人教師に副顧問を依頼する。副顧問の指導で部員は全国大会目指して稽古に励み、次第に自信も付けていく。だが地区大会突破の翌日、副顧問はプロ女優に転身するため退職してしまう。残された部員たちは、それでもそれまでに学んだ知恵と工夫で県大会に向けてブラッシュアップを続け、遂に全国大会への切符を手にした。

表紙イラストの通り、透明感のある作品。
演劇もの小説は、これまで「チョコレートコスモス」「シアター!」と大当たりが続いたので、期待値が高過ぎたかも知れません。本作はとてもお行儀のいい展開でメリハリがなく、小説としてはどこか物足りなさを感じました。
部活動を描く青春小説といえば、熱意が先に立ってドタバタする印象ですが、本作は進学校の女生徒の一人称という設定が効いていて理性的。その分、全体的に淡々としているのです。
でも、人と人が出逢い成長していく実感は感じましたし、作中劇「銀河鉄道の夜」の最後に追加する長ゼリが、本当に良い台詞である、という点は素晴らしかったです。
私は高等学校では部活動をしていなかったのですが、高校演劇の世界を、解説付きで擬似体験できた気がします。

ところで、孝志先輩は打ち上げ時点では高校生ですよね。何の断りもなく、自然に飲酒してる描写があり、違和感を覚えました。

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