有吉佐和子著「開幕ベルは華やかに」

【あらすじ】
大女優・八重垣光子と歌舞伎界の大物・勘十郎が共演する話題の舞台の上演前に、演出家が突然降板。代理の演出家として、推理作家に転身していた渡紳一郎が駆り出され、なんとか初日が開ける。老いた大女優は台詞を覚えずプロムプを必要とし、勝手に演出を変えてしまうが、舞台は絶賛を浴びる。だがある日、劇場に脅迫電話が掛かり「2億円用意しなければ大詰めで八重垣光子を殺す」という――

面白かった!
殺人事件が起こるミステリー小説ですが、主題は犯人探しでなく、舞台演劇の裏側と、エキセントリックな大スターの生き様だと思います。
なんせ、全二十六章ある作品で、あらすじにある脅迫電話が掛かってくるのが十一章、事件解決が二十章と、ページ数の半分しか割いていないのです。そのため、突然塚本刑事が登場して犯人を断定するくだりはやや唐突だし、真相究明はかなり忙しない感じもします。
それが気にならないくらい、虚実を綯い交ぜた商業演劇界の裏側を楽しめました。
時代設定の割に古めかしさを感じないのは、演劇界は時代に関係なくこんなものだってことでしょうかね。

犯人の境遇は哀れだけれど、「偉大な人間は欠点もまた偉大」という渡の結論も面白いです。

語り役である作家兼演出家の渡は、仕事ができる上にグルメぶりも堂に入っているダンディで魅力的。元妻ハルとヨリを戻すような展開にならないのが良かったです。
役者陣では、勘十郎が好き。光子同様、迷惑な役者ではあるけれど、カラっとしていて大衆の求めるものを本能で知っていそうな印象を受けました。

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