さいたま芸術劇場「ムサシ」London & New York version 12:30回
初演は未見のため、London & New York versionになってどの辺の演出が変わったのかは不明。
バルコニー席だったため、背もたれに背中を付ける正しい観劇スタイルだと舞台の半分以上が観えないという、激しいストレスに晒されながらの観劇になりました。
しかし、そんな不利な条件を乗り越えても、面白かったです。
どこが面白かったのかと言えば、脚本の良さに尽きます。
厳流島の決闘から6年後、生きていた小次郎が武蔵に決闘のやり直しを求め、3日後の朝に決闘することになるが……という導入で、決闘までの3日間を描く物語。そこに沢庵和尚や柳生宗矩の思惑や、父の仇討ちをしようとする娘が登場するなど、粗筋だけ書けばシリアスなのですが、井上ひさしらしいユーモアが満載で、劇中は大いに笑い、劇後は清々しさを感じました。
ちなみに、私が一番好きなのは、仇討ち娘のために小次郎が剣術を教えるも、摺り足の練習が次第にタンゴになってしまうというシーンです。
物語全体の仕掛けとなるオチは、やや反則気味ですが、そのファンタジーさも含めて井上戯曲という印象を受けました。