宝塚花組「愛と革命の詩-アンドレア・シェニエ-/Mr. Swing!」18:30回。
本公演で退団する春風弥里を見送らねばならぬ、という使命感で、平日に駆け付けました。
芝居は悪に染まった「黒春風」、ショーは芸名の通り爽やかで陽気を抱いた「白春風」の二本立て(笑)。
それにしても、豪華な“退団公演”でした。退団時は、芝居の配役が良くなったり、ショーに見送り演出が盛り込まれるものですが、これほど見せ場を貰うスターもまた珍しい気がします。
春風弥里という役者について、以前は、技術的には巧いものの地味な印象を持っていました。例えるならば「恋愛対象にはならない、いいひと」だったのです。
ところが、花組に異動してしばらくすると、「色気の漂う大人の男」に変わっていました。この変化は正に「男子三日会わざれば刮目して見よ」と言うしかありません。
ここから更にどんな進化を見せてくれるのか、楽しみにしていただけに、退団は本当に残念です。しかしこの公演で「春風弥里」の集大成を見せてもらい、ある程度は昇華できました。
以下、感想は簡単に。
芝居は、要素は非常に美味しいです。
弟マリー=ジョゼフ@華形ひかるが兄へ抱く複雑な愛憎、モラン@春風弥里は3日後のロベス・ピエール失脚時にどうしたのか、党を裏切った上、マッダレーナから呪いを掛けられたとも言えるジェラール@明日海りおの行く末など、想像の翼を広げたくなる魅力あるキャラクター揃いです。フランス革命前後と言う激動の舞台設定もハマっています。
しかし、一番要である主人公のアンドレア・シェニエ@蘭寿とむという人物について、脚本からは説得力が感じらませんでした。
人々を揺り動かす彼の詩は作中に登場せず、伝聞で凄い人だと言われているだけなのが原因だと思います。シェニエの詩は断片しか現存していないそうなので、登場させられなかったという事情は判るのですが……。
一番山場である裁判シーンで、アンドレアはただ判決を待つだけで、白黒言い合うのはジェラールとモランである、というのも不思議な構図でした。
ショーは、平面構成が多いので二階席向きの気がします。
Swing=ジャズで大人っぽく纏まっているのかと思いきや、アラビアンやら野球やら、カラーの異なる場面がごた混ぜで面白かったです。
「Secret Swing」の望海風斗の歌は全力で熱く、くどく、踊る男@蘭寿とむと踊る女@芹香斗亜(役替わり)の為の曲である筈が、逆に2人をバックダンサーにしているような具合で面白かったです。
春風さよなら演出の数々には感涙。
デュエットダンスで2人が別々に捌けるという終わり方は、今回初めて観ました。