実弥島巧著「テイルズオブシンフォニア 贖罪のクラトス」
全7章、本文313ページ。
【あらすじ】
世界は二つに分かたれ、互いに搾取し合う歪な関係を4000年維持してきた。その罪の一端を担う天使クラトスは、オリジンの封印の前でロイドを待ちながら、これまでの道程を思い返す――
主にクラトスの視点から、ゲーム開始から一騎討ちに至るまでを綴った小説。
“主に”と断ったのは、実際はプロネーマ、ユアン、ミトス、ゼロス、マグニスなど他のキャラクターの視点も含まれているためです。よって、「クルシス側から見たシンフォニア」とでも銘打った方が正確かもしれません。
特に、中盤まではプロネーマが活躍しています。それだけに、彼女の最期が伝聞で済まされてしまったのは残念でした。
ミトスが、クラトスを姉様と同じくらい大切に想っていたこともよく分かったし、それだけに裏切りが許せない気持ちも感じ取れて辛かったです。
もっとも、ファンとしては、クラトス小説を名乗るなら全編クラトス視点でまとめて欲しかったという気持ちがあったり、タイトルの割に贖罪を済ませていないように感じて複雑だったりしました。10年もあると、思い入れが大きくなり過ぎちゃって難しいですね。
シルヴァラント編は、本文のおよそ半分が割かれているだけ濃密で、クラトスから見た再生の旅の様子が分かり、純粋に面白いです。救いの塔で、なにも対策を考えてなかったんだな!?と発覚したときはどうしようかと思いましたが(笑)。
難点を言えば、再生の旅のどの局面でロイドに希望を託す気になったのかが見えず腑に落ちませんでしたが、息子(アンナの子供)だということが最初の理由と受け取ってしまって良いんでしょうか。
テセアラ編も、各エピソードの合間にクルシス側がどう動いていたのか分かり、色々と発見がありました。ただ、プレイヤーが把握している“ロイドたちの動き”は細切れに示されるため、時系列が少々分かりにくかったですね。
長い物語なので、世界再生編は少々ダイジェスト編集に感じました。「ファンダム」の内容が盛り込まれているので、その辺はファンダムをプレイしてね、ということかな。
ちなみに、ユアンさまはいい感じに弄られてました。
私はユアンさまのファンでもあるので、ニマニマしながら読みました。実はこの小説内で、唯一ユアンさまだけがクラトスのことを責めないんですよね。そういう意味でも、清涼剤でした。