藤本ひとみ著「離婚まで」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
良き妻、良き母を演じるワーキングマザー可奈子は、無理解な夫に耐えかね、なぜ結婚したのかと自問する。中学校の同窓会を機に、郷里に戻った可奈子は、母親の望む良い子を演じる余り、本当の自分を失っていたことに気付く。

中盤まで、夫にも主人公にもイライラしながら読んでいました。
身勝手な夫を嫌いになるのは、主人公と同調していると言えるけれど、その主人公自身も鼻につくタイプなんですよね。
郷里に戻ってからの回想で、抑圧された子供時代が描写されることで、なぜこういう人物になったのかは理解できたのだけれど、同情はできませんでした。
しかし、終盤の高校時代の出来事は、思い掛けない展開で面白かったです。
最後にかつてのボーイフレンドと再会した際、颯爽としていた彼がごく普通の不格好な中年になっているのが良いですね。可奈子の幻想を砕くようでいて、本質は変わらないままであったことに救いを感じます。
大きな盛り上がりがない話ですが、それでも最後まで読ませるところに作者の力量があるのかなと思いました。

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