宝塚月組「メリー・ウィドウ」11:00回。
楽しく、愉しく、充実した舞台でした。
観ているうちに自然と笑顔が浮かび、同時に、この幸せな時を止めておけないことを思って泣きそうになりました。
瑕疵がない、完璧な舞台だったわけではありません。
台詞や歌詞が聞き取り辛いことがあったり、セット転換が煩かったりもしました。東屋からマキシムへの場面転換時にある幕前台詞は作品の空気を壊していると思ったし、間延びして感じるシーンもありました。
でもとても楽しい時間を過ごせて、見終わった後は気持ちよく、また見たい、そして誰かに見せたいと思いました。
作中、フレンチカンカンを3回も踊るので、出演者は体力の消耗が激しそうですが、みんな溌剌としているので、観ているこちらも元気になります。衣装やセットも青年館公演とは思えないくらい豪華で、眼も満足。
出演者、スタッフの「いい舞台を作る」熱意に、感謝です。
以下、キャストごとの感想です。
ダニロ@北翔海莉は、陽気なキャラクターだけれど、素直に愛を打ち明けられない、面倒な「男の意地」があるなど、はまり役だと思います。
歌も踊りも、安心して心地好く酔わされました。
ハンナ@咲妃みゆからは、陽性の華を感じました。歌声は透明感あって美しいものの、空気を含み過ぎているのか聞き取り辛いときがあったのが残念。でも尻上がりに良くなったし、演技も堂々たるものだったので、次回舞台「月雲の皇子」の楽しみが増えました。
カミーユ@凪七瑠海は、ちょっと難しい役。失恋して落ち込んでいる序盤や、2幕でハンナに連れられてマキシムへ来た時の頼りなげな雰囲気はとても良かったのですが、自分から積極的に迫るシーンになると「キャラ違い」を感じました。ただ、揺れ幅が非常に大きい役なので、誰が演じても難しかったかな、とは思います。
ツェータ男爵@星条海斗は、美味しい役を美味しく仕上げていました。フィナーレが1人だけ可哀想な状態ですが、そこを悲惨な風にせず笑いに持っていけたのは、彼女のコメディエンヌとしてのバランス感覚だと思います。
ヴァランシエンヌ@琴音和葉は、儚げな風情と、それに反する意外と強かでクールな性格が面白いキャラクター。
男爵の部下ルクシッチ@春海ゆうは、早口言葉が大変そうでしたが、口跡が良く意外な実力派でした。声がもっと低くなることを願います。
ベルギーの外交官・サン=ブリオッシュ@紫門ゆりやと、スペインの外交官・カスカーダ@煌月爽矢は、似たり寄ったりのダメ男。煌月爽矢は初めて認識しましたが、役通りスペインっぽさを感じるいい男でした。
ちなみにこの2人、1幕の掛け合い歌で「実は仲が良いのでは」と思っていたら、フィナーレでは夫人たちから見放され、あぶれた2人で組んで踊っていたのが面白かったです。振りも小芝居仕立てなので、センターの主役ペアを差し置いて凝視してしまいました。
ダニロの侍従・ニエグシュ@暁千星は、超抜擢。台詞回しがまだ仕上がっておらず、やや役者不足の感はありました。が、明るいコメディだから大きなマイナス点にはなりませんでしたし、評判通り踊りは素晴らしいキレでした。
その他ポンテヴェドロ国の面々では、黄土色の軍服を来た老紳士・プリチッチ@輝城みつるとその妻・プラシコヴィア@真愛涼歌が、まだ若いのに老け芝居を巧くこなしていて、今後の名脇役として期待させられました。
(役名、キャスト共に少々自信がありませんので、違っていたらご指摘ください)