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「All for One」キャスト感想の続き。

まず、「世紀の色男」アラミス@美弥るりか

アラミス

冷静に考えると懺悔室での受け答えも適当だし、相当酷い男なのですが、戯画化されているので笑いに転化されます。浮名を流しているけれど、マリー・ルイーズといい、モンパンシェ公爵夫人といい、女性から迫られると及び腰になるので、結構本人は淡白な性質なのでないかと思いました。

ポルトス@暁千星は、今作は役者のキャラクターに寄せて、強いけれど阿呆で面倒も引き起こす、可愛いマスコットという印象。目を引く美男子だし、毎公演上手くなるし、このままスター街道を驀進して欲しいと思います。

アトス

アトス@宇月颯は、周りの二人が調子良いタイプな分、寡黙で落ち着いた立ち振る舞いが引き立つ、大人の魅力がありました。また、さすが生粋のダンサーだけあって、立ち回りが綺麗な点も格好良いのでした。近年、活躍の場が与えられるようになって、本当に嬉しいスターの一人です。

それにしてもこの作品、実は「三銃士」要素は三銃士とダルタニアンのキャラクターだけで、全編オリジナルでも成り立つ話です。
しかし三銃士のキャラクターを借りたお陰で、3人の個性が生きたと思います。例えば「1789」でも、革命家は3人いますが、個々の役者を把握できる観客でないと、3人を見分けられませんでした。しかし「ALL for ONE」では、3人の個性で見分けることができます。

アンヌ@憧花ゆりのは、貫禄があり、お茶目でもあり、王族らしくもあり、余白のある演技で、二回観たら一番人物像が複雑に感じて面白かったです。
もともと、コメディとなれば観客を相当笑わせる役者ですし、貸切公演の挨拶でも憧花組長らしいパフォーマンスがあり、過去にはやり過ぎと思うこともあって心配していたのですが、ちゃんと役の範囲に抑えた上で舞台を盛り上げる、組長らしい演技になったなと思いました。

老獪なマザラン枢機卿@一樹千尋は、肖像画のイメージに合わせたのか、随分お痩せになった気がしました。回想シーンの若い演技が可愛らしくて、思わず肩が震えました。いつも通り、専科の名に相応しい存在感と演技でした。
ベルナルド@月城かなとは、わかりやすいライバル役で月組デビューに成功。ただ扱われ方が道化的でもあるので、格好良いというよりは、目立つというだけかな。「るろうに剣心」で演じた蒼紫のセルフパロシーンは、笑うところだと思います。役者としては、もうひと押し欲しかったです。
その点、フィリップ@紫門ゆりやはいつも回ってくるような役でも、今回はヒゲ付きにしたり、色々試行錯誤が見られました。

フィリップ

まあ、この人の弟だから、ベルナルドは歪んだ気もします。

マリー・ルイーズ@早乙女わかばは、1回目では全然気付かず、さすがに6人もいる姪の一人では、意識しないと見分けられないなと思いました。でも彼女が演じていると思って観ていれば、「満月」の踊り子だとか、色々目立つポイントはあるのですね。

ロベール@千海華蘭が、基本無表情で格好良いことは前々回に書いた通り。

ロベール

台詞も低めの声で、もともと美声だけれど更にグッと来ました。ただ、2回目の観劇時、酒場の乱闘シーンの後も一人だけ肩で息をしていたのは、演技だったのか体調が悪かったのか、少し気になりました。
千海が目を引いた分、相棒ポジションのクロード@輝月ゆうまは、今回割りを食っていた気がします。
最近、背が高い役者が増えて、千海は「小柄である」という特徴を得たように思うし、逆に輝月は埋もれるように感じたかな。その不利をひっくり返す為にも、歌う場面が欲しかったです。

ジョルジュ@風間柚乃は、100期生にして既に男役の演技ができていると思います。
ビゴー@綾月せりシモーヌ@白雪さち花には、初めて小池先生のラップ演出が活きた!と思いました(笑)。

マリア・テレサ@海乃美月は、娘役スターなのに変な役もできてしまって、芸達者ゆえに将来が帰って心配になる好演。変人王女様ではあるのだけれど、王族として自分の立場をわかっていて、許される範囲ギリギリで我儘を楽しんでいるのだと思います。だからこそ、お供の面々も、彼女を守り立てようとするのでないでしょうか。

少年ダルタニアン@彩音星凪は、なんと101期生。子供過ぎない芝居で、レイピアの扱いも綺麗でした。しかし芸名の字面だけ見て、姓と名が逆じゃないのかと思います。そして父ベルトラン@貴澄隼人は、この人に育成されれば珠城りょうみたいな肉体派になるわ!という説得力がありました(笑)。

(写真は宝塚歌劇団月組「All fot One」スチールより引用)