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宝塚月組ミュージカル「チェ・ゲバラ」@日本青年館11:00回

改装後、初の青年館観劇。
場所が変わったということもありますが、記憶と全く異なるスタイリッシュな建物になっていたので、「これが青年館?」とビックリしました。
全体的に広くなり、トイレ動線も改善されたし、コンビニやカフェも併設されているので過ごしやすくなりました。でも客席は相変わらず横に広い印象ですね。2階席は傾斜のせいか、前より遠くなった気がします。端席、前方席の人の頭の位置などの影響もあって非常にストレスの溜まる観劇になってしまったのですが、舞台にはとても引き込まれました。

お話自体は、原田先生の偉人記シリーズ。特に二幕は話が飛び飛びで、各シーンはいいのに前後の繋がりがわからなくて引っ掛かりました。公演時間には余裕があったのだから、国連で演説することになった流れだとか、ボリビアに行ってからの出来事を少し描いで欲しかったです。
しかし、役者たちの熱量が凄まじく、革命への意気に飲み込まれた感じです。出演している月組メンバーのうち、上級生は芝居巧者揃いとわかっていましたが、これまで知らなかった若手生徒も驚くほど上手く、これぞ「芝居の月組」と堪能しました。
南米・革命モノ・男の友情と揃っているせいで、たまに「マリポーサの花」を思い出しましたが、本作はより泥臭い舞台だったと思います。
そして革命後を描く二幕は一層重苦しかったものの、フィナーレはラテンアメリカのカラッとした音楽が流れ、気持ちよく終われました。

原田作品の舞台を支える松井るみ先生の装置(大道具)は、今回も変幻自在の大活躍でした。最早、もう一人の出演者といっても過言でない気がします。

以下、キャスト感想です。

エルネスト・ゲバラ@轟悠(専科)は、正直、ゲバラを語るのに全く足りていない脚本を、その熱量と重みで埋めようとしていたと思います。一幕前半の若い頃のゲバラは、いまの轟氏に演じさせるのは厳しいと思ったが、時間軸が進むことでどんどん良くなり、その美貌と存在感に終始圧倒的されました。
心配していた歌は、現在の轟氏の音域に合った曲であれば十分歌えるのだとわかって一安心。
この男臭さは、昨今の宝塚ファン向きでないかもしれないけれど、やはり得難い役者だと思います。

カストロ@風間柚乃は、主人公と対等の大物を、堂々たる演技でこなしていました。本作のMVP。
プログラムの演出家挨拶に、はっきり「月城かなと休演による代打」と書かれていましたが、新人公演学年(100期生・研6)で、轟悠(71期生・研35)との年齢差を感じさせない演技でした。ただ、近くで見れば実年齢の若さが見えた可能性はあります。今回二回席だったので、どちらかというと地味な見た目の風間は十分大人に見えました。

一応ヒロインにあたるアレイダ@天紫珠李は、オープニング登場時は、パンツルックのせいもあって男役かと思いました。最初は踊り子たちに対する発言などで嫌な女に見えたけれど、台詞が非常に明朗なところがハキハキしたキャリアウーマンという感じで、恋愛色の薄い本作には合っていたと思います。

非道な悪役であるバティスタ@光月るうは、人のいい感じを封印したことで、これまでにない風格を感じました。

エル・パトホ@千海華蘭は、出演者の中で上から3番目に長い芸歴なのに、一番可愛いラテン男でした(笑)。冒頭の客席弄りは誰も乗ってくれず、「ウフフじゃないですよー」と愚痴ることで更に笑いを誘っていました。軍事訓練をしているときのダメっ子具合が可愛くて、それでも芯のある男であることが伝わってきました。

革命チームの中ではちょっと浮いた美しさで目立つのが、ミゲル@蓮つかさ。エルネストに頑なな序盤と、空爆機相手に機銃で立ち向かおうとしたときの狂気具合と、妹にメロメロなギャップがちょっと面白かったです。

レイナ@晴音アキルイス@礼華はるは、主軸とは別に大きなドラマを見せる役。どちらも、美しさと悲哀を感じさせる良い役でした。フィナーレで、学年の差を超えて、2人が手を取り合って登場したのが良かったです。
特にルイスは、名前も知らない若手生徒でしたが、芝居も歌も実力十分、すらっとした長身の姿も美しく、これまた大器だと思いました。

ランスキー@朝霧真が下衆な悪役で、出番は少ないながら、存在感を残しました。
二幕ではテラン役。ゲバラに銃を向けている緊張感を客席にも共有させる演技だったと思います。

佳城葵は記者のハーバート・マシューズが本役だと思いますが、幕開きの現代シーンで、ゲバラの肖像を見つめる旅行客男としての後ろ姿が印象的でした(いい導入部なのに、回収がないまま終わるのはどうかと思いましたが)。

本作は出演者が少数ということもあって、ほとんどのメンバーがモブも演じているのですが、特にギレルモ@輝月ゆうまは、役としての出番が遅いので、ちょっとヤキモキしました。笑顔いっぱいのソロシーンがあって良かったけれど、この人の役だけはちょっと物足りなかったかな。まあ、おっさん臭さを活かした配役と言われればその通りですが(笑)。
エリセオ@きよら羽龍は、娘役による少年役ですが、非常に自然な「坊主」でした。その最期には涙を誘われました。ベタな展開ではあるのですが、芝居はやりすぎることなく、控えめに抑えていたのが却って効果的だったように思います。

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