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宝塚月組「夢現無双」「クルンテープ 天使の都」18:30回。
時間が遅いので短くまとめようと思ったんですが、言いたいことが多くて、あれこれ書いてしまいました。

グランステージ「夢現無双 ー吉川英治原作「宮本武蔵」よりー」

吉川英治先生の「宮本武蔵」は、子供の頃に徳川夢声氏の朗読カセットで聞いていたーーという記憶はありますが、内容は一切覚えていません。
宝塚ファン層では好かれない題材なので、事前に漏れ聞こえた劇評も、題材的に致し方ないかと思っていたのですが、実際に観て、なぜ評判が悪いのか、わかったように思います。

主役を筆頭に、登場人物が格好良くないからです。
話がぶつ切りで前後関係が繋がっていなくても、剣劇シーンばっかりでも、宝塚なのだから、スターが格好良ければファンはある程度納得したでしょう。
それなのに、本作が一時間半かけて描いたものは、武蔵@珠城りょうの「未熟な強さ」でした。肉体的に強い男が、自分の弱さを隠すために暴力を振るい、強さを誇示していたと悟る話なのです。
どうしてもそういう話を書くなら、圧倒的に強くすべてをねじ伏せる様で爽快感を味わわせてくれれば良いのに、2/3は武蔵が敗北して諭されるシーンばかり。それで「あの男は強い」と言われても、そうなの?と思ってしまいます。
小次郎@美弥るりかは美しかったけれど、それは役者の美しさであって、脚本上の人物としては、全然魅力を感じませんでした。

男だけでなく、ヒロインのお通@美園さくらにも魅力がありません。
そもそも、お通が好きなのは幼馴染の武蔵(たけぞう)なんじゃないでしょうか。たまたま武蔵がお通を憎からず思っているから、二人の間で恋愛が成立しているように見えるけれど、実際は剣豪・武蔵にとっては剣の道の障害にしかなっていないし、一方的に待つ約束をしたりする「重い女」っぷりが居心地悪くて、観ていて辛かったです。

本物と遭遇してしまう偽小次郎(又八@月城かなと)とか、面白いシーンもあったのですが、今回ばかりは欠点の方が目立ち、加点要素が機能していませんでした。

こういう作品は、せめてド派手な演出で目眩しすべきですよね。それなのに、幕開きからしばらく子役芝居が続くせいで、掴みも悪かったです。個人的には、子供時代なんて、3人が幼馴染であることとお通の気持ちを示すだけで良かったと思います。
そのあとの関ヶ原の合戦シーンだけはショーアップされていて良かったので、早くこれを持ってくるべきだったと思います。

メイン以外の気になったキャストはピックアップで。
吉野太夫@海乃美月は、底知れない凄みがありました。
城太郎@結愛かれんは、作中の時間経過を感じさせる、童から少年、そして男への成長が見える演技で良かったです。
新免無二斉@紫門ゆりやは、これまで観たことがない「主人公にとっての壁」という大人の男で、いつの間にか、こういう役ができる上級生になっていたんだなぁと感心しました。

レビュー・エキゾチカ「クルンテープ 天使の都」

クルンテープは、タイの首都バンコクのこと(正式名称の最初の言葉)。
観劇前は、正直「全編タイ風は飽きそう」と否定的な印象だったのですが、全場面、オリエンタルコンセプトを貫いているのが、却って新鮮で良かったです。手の振りなども独特で素敵だし、衣装も面白かったですね。
退団者への餞別演出もバッチリでした。

男役に女装させることに定評のある藤井大介先生で、タイのショー……という時点で、確実に女装はあると身構えていましたが、珠城りょうは意外と男装の麗人みたいな感じだったし、暁千星は胸を出していても男性アスリートみたいな風情で格好よかったです。
唯一、迫力を前面に出していた輝月ゆうまは、歌を存分に聞かせてくれました。
蓮の花(珠城&美弥のダンス)での娘役3人(晴音アキ、麗千里、きよら羽龍)の歌も上手かったですし、月組は全体的な歌唱力が高くて頼もしいです。

その他、語りたい人だけ。
暁千星は、毎回同じことを書いている気がするくらい、公演ごとに上手くなっていて、まだ成長するのか!と驚きつつ楽しませて貰えています。中詰では一人だけ歌っていなかったけれど、あれだけ歌える暁を踊りだけで銀橋を渡らせるのも贅沢な演出だなと思いました。
千海華蘭が、今回は髪を非常に短くしていて、一層少年めいた可愛さで撃沈しました。

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