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宝塚月組「エリザベート 愛と死の輪舞」千秋楽ライブビューイングに参加。

チケットが一枚も確保できなかったので、千秋楽ライブビューイングに参加してきました。
本作で退団する娘役トップスター・愛希れいかのサヨナラショー付き。
ちなみに、過去に参加した男役トップスターの退団時のライブビューイングは「ラストデイ」と銘打たれていましたが、今回は娘役単独退団のためなのか、公演名でのライビュ扱いでした。

ミュージカル「エリザベート 愛と死の輪舞」

まず公演についての感想ですが、非常に「シンプルなエリザベート」という印象を受けました。

私がそう受け取った理由は、2つあります。
理由の第一は、トートの独特な透明感です。
近年の公演では、シシィに拒絶されると怒ったり、悲しんだりする、感情表現豊かなトートが多かったように思うのですが、トート@珠城りょうは抑制されて見えました。それも、単にクールというわけではなく、感情を抑えているように見えました。
また耽美過ぎることもなく、かといって健全とも言えず、男ではあるがシシィの双生児のように見えるときもあり、全体的に「中性的」に見えました。
シシィへの愛自体も、男女の愛ではなく、神の愛「アガペー」だったのでないか、と思います。

もう理由の第二は、シシィへの共感しやすさです。
近年、エリザベートの物語に対しては「義務を果たさないシシィ」への批判が増えていたように思います。かくいう私自身、シシィには皇室に嫁ぐ覚悟なく恋に浮かれて結婚してしまった落ち度がある、と思っていました。
しかしシシィ@愛希れいかは、フランツに恋していないと感じました。
バート・イシュルで口付けされる際、身を固くする演技は他のシシィでも見られましたが、その後のフランツの告白に至っても表情は固く、瞳が輝くでも頬が紅潮するでもなく、まだ誰かに恋するほど大人ではなく、ただフランツの誠実そうな人柄に折れたように見えました。そのため、シシィは望んでフランツと結ばれたわけでなく、皇帝陛下から求められて断れなかった普通の女の子だったのかもしれない、と思えたのです。
導入で躓かなかったお陰で、終始シシィに好意的な視線で観ることができました。

でもシシィの演技に関して一番感心したのは、冒頭の詩の朗読が、それだけでシシィの人となりを表す芝居になっていたことです。
これまで、この台詞でシシィが抱く「自由への憧れ」をここまで表現した役者はいなかったように思います。

その他キャストについては、思いつくまま。

フランツ@美弥るりかは、優しく不器用な、善良な皇帝陛下でした。歌は、フランツの歌は音域が広い点に苦しめられていたと思いますが、裏声も使って歌い切っていました。
ルキーニ@月城かなとは、狂気に走り過ぎていないルキーニでした。かと言って狂言回しに徹しているというわけでもなく、ちょっと面白い立ち位置。
ルドルフ@暁千星は、一見真っ当な皇子様なのに、全体的に内向的な人物像でした。常に自分のことに手いっぱいで、エルマーたちのことも、国民のことも見ていなかったように思います。革命後に捕まるシーンなど、従来はエルマーを庇うという明確な意思があって身代わりに捕まったと思ったのですが、今回は革命失敗で頭を抱えている内に勝手に捕まったように見えました。

マックス@輝月ゆうまは、結婚式の時の気難しそうな雰囲気が、娘の似合わぬ結婚を心配する父親らしさと、シシィとの血縁を感じさせました。
ヴィンディッシュ嬢@海乃美月は、配役の時点で期待していたけれど、それを上回るレベルで本当に素晴らしかったです。海乃ヴィンディッシュは決して暴れたりしないのに、病んでいることが明確に見て取れてゾクっとしました。それだけに、大好きな扇の交換パターンの演出で嬉しかったです。

エルマー@蓮つかさに関しては、生真面目な革命家として、派手さはないものの確実に熱量を感じると思いました。
一方ツェップス@光月るうは、歴代の百戦錬磨っぽいツェップス役者に比べるとひ弱な印象で、ツェップスがエルマーたちを使うのではなく、エルマーたち若い革命家に押し流されていった感がありました。

ゾフィー@憧花ゆりのは、対シシィでは怖いけれど、それ以外ではどことなくチャーミングな印象。
ラウシャー@千海華蘭は、予想外に老けた演技で驚きました。群舞で格好いい姿が見られたので満足です。
ゾフィー、ラウシャーの二幕での老けかたが激しかったのに対し、グリュンネ@紫門ゆりやはイケメンキープで、実はシシィ並に美貌を保つ努力をしているのでないかと疑いました(笑)。
リヒテンシュタイン@晴音アキが、ちょっと気怠い印象のリヒテンシュタインで面白かったです。ゾフィーに対してもシシィに対しても、単に宮廷人としての務めで接している感がありました。
死刑囚の母@玲実くれあは、非常に悲しみに満ちた訴えで、これを却下しなければならないフランツの苦悩も伝わりました。

本編ももちろん楽しみましたが、実は一番感動したのはフィナーレのデュエットダンスでした。
最初は愛希が珠城を拒絶するような振り付けから始まって、あるタイミングから、その腕を借りつつ伸び伸びと笑顔で踊り出すという、本編のイメージを盛り込みつつハッピーエンドを感じさせるもので良かったです。

愛希れいか さよならショー

前半は、トップ娘役就任後の時間軸順に4曲を連続で歌唱。
「ロミオとジュリエット」「ベルサイユのばら」「舞音」「1789」と、実際に観た公演または有名曲だったので、安心して聞いていられました。
憧花ゆりのソロを挟んで、後半に「グランドホテル」の「Love can’t happen」を男爵とのやりとり、振り付きで演じ、最後に組子を呼んで「Dream Girls」熱唱で終わりました。
退団者が2名だけだからか、男役トップのサヨナラショーの平均より曲数は少なかったです。

最後まで、素晴らしい歌唱で楽しませてくれました。
そして最後の最後に、遂に「泣き虫」の顔が出てしまったところも、愛おしい娘役でした。

なお、憧花ゆりのへの同期からの花渡しは、元月組娘役の城咲あいでした。
今まで意識していなかったけれど、この二人は同期だったんですね。前回の月組公演では城咲がゾフィーを演じていたことを考えると、本当に若いゾフィーだったんだな、と当時の城咲の苦労に改めて思いを馳せてしまいました。

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