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宝塚月組「月雲の皇子 ―衣通姫伝説より―」11:00回。

月組若手メンバーによる、バウホール5月公演の再演。
演出家のデビュー作、主役の初主演作(再)、ほとんど下級生というメンバー構成とは思えない、秀作だと思いました。
細かく見て行けば、突っ込み所もあります。
例えば、一幕で殺されたティコは、弟妹がいると語っていたので、二幕で蜘蛛族が物語の中心に移ったら弟妹が登場するかと思いきや、その場限りの設定で繋がりがなかった。また、衣通姫の出自を土蜘蛛たちの前で明らかにしないので、カタルシスをもたらさなかった。あと、お約束通り、主役が刺されてから死ぬまで長かった(笑)。
しかし、見終わった後に「良い芝居を観た」と思える作品でした。

役者は全員、大健闘。
木梨軽皇子@珠城りょうは、台詞回しが出来上がっていて、思っていた以上に芝居ができる生徒だなと感心。歌も踊りも破綻はなく、既に「安定」という印象でした。個人的には、一幕の心優しい皇子より、二幕の心を凍らせた蜘蛛の大王の方が凄みがあって好きです。
穴穂皇子@鳳月杏は、ダブル主演といっても良い美味しい役。一幕は声が軽く台詞が滑りがちに感じましたが、中盤以降、声を落とすようになってからグッと魅力が出ました。最後の木梨との決闘とやり取りは、長丁場でダレそうなところを、緊張感を保って演じていたのが良かったです。
2週間前に「メリー・ウィドウ」でもヒロイン姿を見た衣通姫@咲妃みゆですが、しっとりした声音と佇まいで、まったくタイプの違う女性に化けていました。出番は少なく見せ場も殆どないですが、ヒロインという説得力がありました。

「メリー・ウィドウ」との別人っぷりに驚いたもう一人は、大中津姫@琴音和葉。なんと老け役で、しかも威厳たっぷりの皇太后。巧かったです。ヴァランシエンヌとはまったく結び付きませんでした。
その他、娘役にかなり役がついていて、老女では蜻蛉@夏月都麻忍&キラン@白雪さち花、若者では蜘蛛族の女戦士・ガウリ@咲希あかねなどが眼を惹きました。

男役の内、歌で実力を披露したのが史部を束ねる渡来人・博徳@輝月ゆうまと、蜘蛛族のアミル@千海華蘭
※後者の役名と役者には自信がありません。茶系の服装で腕に縄を巻き、最後まで生き残る青年です。カーテンコールでは下手から10番目。少し幼さの残る、私の好みの顔でした。
蜘蛛族のメンバーは、それぞれ個性があって良いのですが、一度に登場するため、下級生が見分けられない私は名前と顔が一致できないまま終わってしまいました。
そんな中、土蜘蛛の子供・ティコ@佳城葵は、短時間のやり取りで木梨と交流を深め、タイトルの「月雲」の説明をして死ぬ、という判り易い見せ場があり、芝居も良かったので印象に残りました。

最後に、一点だけ残念だった点を。
本日、銀河劇場の3階席で観劇しました。一幕序盤、戦場から大和の宮殿に場面転換するため、前方に白い布を降ろしてカーテン前で芝居するシーンがありますが、その間、裏方が舞台設置を行っているのが3階から丸見えでした。
初演(バウホール)ではそんな高い位置に客席がなかったのでしょうが、銀河劇場で上演するにあたって、少し配慮して欲しかったかなと思います。
もっとも、「レアなモノを見た」という気持ちも多少ありました。

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