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宝塚星組「眠らない男ナポレオン -愛と栄光の涯に-」11:00回。

全編、ジェラール・プレスギュルヴィック氏による楽曲で彩った、日仏合作ミュージカル。
とにかく、曲のない時間がほとんどありません。演奏するオーケストラメンバーは休みがなくて大変そう。
……なのですが、あまり楽曲は印象に残りませんでした。
ずっと芝居として歌っているので、ここぞという「聴かせる曲」が見当たりません。個人的に一番心に残ったのは、退位したナポレオンに向かって兵士たちが「革命の守護神」とアカペラで歌う短いフレーズでした。
星組は、大作が続いているせいか、コーラスに力がありますね。歌唱力のある専科生が多数参加していることやマイクの性能も一因でしょうが、予想より歌に満足できました。

お話としては「よく分かるナポレオンの生涯」という感じで、士官学校時代から退位して島流しにされるまでを2時間15分にまとめた、超ダイジェスト作品。
この時代前後の小説を読んだり舞台作品を観たりしていたので、ある程度人名や人間関係や分かっていたので、話から取り残されることはありませんでしたが、カタカナ名が苦手な人だとちょっと大変そうですね。
あと、フランス語の台詞は必要なかったのでは。

舞台装置はやや物足りなかったです。最近おなじみの、映像と合わせた演出でした。玉座の壁が扉になっている構造や、ぐるりと回るバルコニーなどは、面白かったです。
衣装は豪華絢爛。
ただ、女性陣はギリシャ風ドレスが流行した時代なので、私の好みとはズレていて少し残念。でもジョセフィーヌがバラスの愛人時代に着ていたパーティのドレスは凄く良かったです。
あと、今回のフィナーレの衣装は、今後使い道があるのでしょうか……。

ナポレオン@柚希礼音は、任期の長さも納得できるスターでした。
士官学校の中から頭角を現し、兵士や市民の支持を取り付け、ぐんぐん上昇していく一幕はそのオーラに説得力があったし、凋落して周囲から人が去っていく二幕では逆に、その強すぎる意志が他人には厳し過ぎたのだということも納得できました。
ジョセフィーヌと結婚できなければイタリア遠征に行かないと駄々を捏ねるなど、公私混同の我が侭は、なんだか可愛く見えました。
ジョセフィーヌ@夢咲ねねは、ヒロインとして説得力がある艶ある大人の女性。ただ、強かな悪女に見えてしまいました。ナポレオンの地位が上がったから別れるのが惜しくなり、皇后の地位に昇ってからはそこにしがみつこうとし、離婚時も称号と城と年金を貰ったので妥協した……という女を描こうとしたなら良いのですが、そう解釈すると最後の嘆願で引っ繰り返るし(苦笑)。脚本も悪いと思うけれど、一幕の間にナポレオンを本当に愛するように変わっていたことが伝わってきませんでした。

マルモン@紅ゆずるは、最初は「お間抜け」なところから、次第に先輩に対する不審が蓄積されていき、老マルモン@英真なおきに繋がるのが見えました。人間的な弱さやミュラへの嫉妬があったり、リアルで良い演技だったと思います。
タレーラン@北翔海莉は、数ヶ月前に主演作品を観たので、「助演」に留まっているのが物足りない気がしましたが、前に出過ぎず、作品の一部として役目を果たしていました。
今回はダークな役なので、声を低く作っているのが良かったです。
また、足が悪い設定をちゃんと盛り込んで、常に杖をつき、足を引きずりがちに歩いていました。あまりに真に迫っているので、足を怪我しているのか?と心配してしまったほどです。フィナーレで踊っているのを観て安心しました。
ミュラ@真風涼帆は、伊達男という感じがピッタリ。ナポレオンにダンスの手解きをして「まぁ良いでしょう」と言う箇所で、不意に「スカーレットピンパーネル」のアルマン(恋のレッスンが必要ですね)が重なって、これがフランス男か!と思いました。芝居と歌に関しては随分安定感が出てきましたね。後は、ショーで飛び出てくる強さが欲しいかなぁ。

ナポレオン二世@天寿光希は、話の聞き手として、舞台を展開させる役。台詞が明瞭で、分かりやすく物語を補強してくれました。爽やかな二枚目だけれど、どこか寂しさや危うさが感じられるのは「帝冠の恋」を読んだ影響か、それとも役者が意識してやっていることなのか、気になりました。
ウジェーヌ@礼真琴は、幼い容姿と合った良い役。エジプト遠征時の女遊びのシーンで戸惑っているのが可愛かったです。その後、時代の流れとともに段々成長していくのも見えました。

ジョセフ@十輝いりすは、長男らしい感じは出ていました。決して悪人ではないけれど善人とも言えず、ごく普通の人間なのかなという印象を受けました。
マリー・ルイーズ@綺咲愛里は、とても可憐なお姫様姿。ただ、泣き伏すシーンは下手過ぎて驚きました。
フーシェ@美稀千種は、今回初めて意識して観たのですが、歌える人だったのですね。タレーランに一歩も引かず、時には上回る力で歌っていたと思います。

専科組は、さすがに巧者揃い。
レティツィア@美穂圭子は、さすがの迫力で聴かせてくれました。あれだけ沢山、気が強い子供たちを育て上げたのも納得の女傑です。
バラス@一樹千尋は、悪辣で狡猾な雰囲気がにじみ出ていました。
シェイエス@美城れんは、含み綿と胴布団でコロコロとした体型を作っていて、コミカルな動きに眼を引かれました。

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