須賀しのぶ著「芙蓉千里」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
辻芸人の親に捨てられたフミは、売れっ子女郎を目指して、自らハルビンの支那人街にある日本人女郎屋「酔芙蓉」に飛び込んだ。やがて芸妓となり、舞の名手として名を馳せるようになる。日本と支那の関係悪化に伴い、酔芙蓉の経営は傾き始めるが、故郷も親も失ったフミは、酔芙蓉こそ自らの故郷だと思い、可能な限り酔芙蓉に残ろうと決意する。

面白かった!
導入は説明が多く読み進む気が失せたのですが、物語の舞台である女郎屋「酔芙蓉」に到着し、下働きとして働き始めてからはグングン惹き付けられました。
まず、気持ちがいいのがフミのキャラクター。
自分の力で生き抜こうとする逞しさとが格好いいです。好きな男に縋り付くような弱さもあるのですが、本質的には強い方だと思います。気が強くて喧嘩っ早いけれど、計算高くて現実に生きている感じもあり、なにより「舞」という武器を持った女である点に痺れます。物語の最後に下す決断も、とても共感できてよかったです。
さらに、「酔芙蓉」の女将と姐さんたちが、芯が通ったいい女揃いで素敵です。派手好きで口は悪いけれど情深い牡丹(千夜)が、次第に零落れていくのは悲しかったけれど、最後に昇華されてホッとしました。
で、いい女がいれば、いい男も登場するのです。私は旦那・黒岩さまが好きですね。分かりやすい男女の愛情ではないかもしれないけれど、単に後援者というだけでない気持ちの入りかたがあって、支えてあげたくなります。
フミは怒り狂ったけれど、「くまさん」ことベリーエフも、可愛いと思います。

第一次世界大戦前という混沌期で、舞台は女郎屋だけれど、みんなが懸命に生きているから、とても明るい感じがします。気持ちよく読み終わりました。

コメント

水輪

 なんだか、まとめてあれこれコメントで申し訳ない。
 須賀さんは女性キャラがカッコいいんです!良い意味で男前!
 デビューがコバルト全盛期だったので、女性としての葛藤も含めつつ、綺麗事じゃないとこもきちんと描写してるところが好きでした。
 この話は粗筋しか読んでないんですけどね……時代設定が苦手で(笑)

麻生壱埜

いえいえ、コメントありがとうございます。
確かに、女性が男性以上に男前でした。
私も、時代設定&舞台としてちょっと苦手感があるため、続刊には手が出ない感じですが……。
本作を読んでから、コバルト作家だと知ってその頃の作品も読んでみました。
結果が2/9記事「帝国の娘」に続くと(笑)。

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