佐藤多佳子著「しゃべれどもしゃべれども」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
二ツ目で停滞している囃家・今昔亭三つ葉は、ひょんなことから吃音の従弟等の老若男女4人に落語を教えるうちに、自身の落語を見つめ直し、好きな物を好きなまま演じることを良しと思えるようになる。

リアルだと思ったのは、落語会の後も、それぞれの生活や人間性は決して変わらないところ。三つ葉含む5人が妙に仲良くなったりもしない。落語を習う4人はそれぞれに悩みを抱えていて、それは、たまたま始めた落語が解決してくれるようなものではないのです。
でも、落語が一つの契機となって、明日は昨日までの日とほんの少しだけ違う——かもしれない。
そう思える良い作品でした。

頑固な上に気が短く、直ぐ手が出る主人公・三つ葉の江戸っ子具合が、一種爽やかに感じます。
囃家という職業のためか、あるいは単に短気なためか、心の声も闊達でテンポがいいです。文章表現も、独特の風情があり、現代日本なのにどこか昔懐かしい下町の空気に溢れていました。

コメント

  • コメントはまだありません。

コメント登録

  • コメントを入力してください。
登録フォーム
名前
メール
URL
コメント
閲覧制限
投稿キー
(スパム対策に 投稿キー を半角で入力してください)