- 分類読書感想
赤澤竜也著「吹部!」
【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
廃部寸前の吹奏楽部に所属する2年生・鏑木沙耶は、「全日本吹奏楽コンクール」を目指すという新任顧問・三田村から無理矢理部長に任命された。強引な三田村に振り回され、衝突しながらも、次第に部員たちは本気でコンクール優勝の夢に向かって一体になり、遂に都大会に出場する。
「ドラフィル!」に引き続き音楽小説。こちらは明快な青春ストーリー。
顧問である三田村(ミタセン)が生徒に対して強引なタイプで、私の苦手なタイプそのものだった上に、沙耶がミタセンに押し切られて希望しないポジションに追い込まれていくのが嫌で、最初は読むのを止めようかと思いながら読みました。
しかし中盤を過ぎて、今度はご都合展開だけれど、生徒の側がやる気になって一丸となっていくから、若いパワーと一体感を味わえて楽しかったです。
音楽小説としては、コンクールの課題曲がなにかも描かれておらず、ただ演奏や指導シーンが続くだけで、あまり真実味がないし、そもそも4月に部員獲得を始めて、夏の予選に間に合うのかと突っ込みたくもなるけれど、部活小説としては面白かったです。
文章は、沙耶または西大寺の一人称形式。
ほとんど単文で構成されている印象で、描写としての厚みはない代わりに、サクサクとテンポよく分かりやすいです。
全体的にキャラクターが濃いです。
私の好みだと、「1人軽音楽部」状態でドラムを叩いていた榊が面白いかな。もっとも、最後に愛用ドラムの「健太」を失うトラブルは、取って付けたようなエピソードだと思いました。