藤本ひとみ著「ブルボンの封印」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
親を知らず育ったジェームズと捨て子のマリエールは、各々のルーツを探す旅に出る。マリエールはジェームズと瓜二つのフランス国王ルイと出会い、やがて彼の愛妾になる。一方、ルイの双子の兄だったジェームズは、弟から王位を奪取すべく動き出す。ジェームズはルイに捕らえられるが、誤って毒を飲んだルイは記憶を失ったため、ジェームズがルイ14世に成り代わる。

「鉄仮面伝説」を元にした作品——であることは、上巻の半ばで気付きました。その時点でジェームズの正体と物語のオチは予測可能です。それでも、キャラクターの魅力で最後まで引っ張られました。

残念ながら、読了感はあまり良くありません。これまでに読んだ藤本ひとみ作品の系統と同じく、途中までは面白く、最後で気が合わなくなりました。
今回の場合は、都合良く不要な人間を片付けてハッピーエンドに仕立てた印象を受けました。
兄であるジェームズが王位を継ぐのが正しいのかも知れないけれど、現代日本人の感性としては、それまで王として働いたルイの人生とは本当に何だったのかと思います。元々自分が兄を排除しようとしたわけでもないのに、愛妾からは混同された挙げ句冷められ、寵臣からは密かに天秤にかけられ、可哀想になってしまいました。
また、途中まではキャラクターが非常に魅力的だったのですが、終盤になると、主人公格のマリエールが「高潔なヒロイン」設定で酔っているように感じてしまいました。特に、妻ある人の愛妾という立場が嫌だったはずなのに、「ルイ」の中身が入れ替わったら、またやり直す気になる結末が、個人的に不満です。
もし、ジェームズとマリエールが駆け落ちするような終わりなら清々しかっただろうけれど、そうなると今度は「鉄仮面」が存在しなくなってしまうんですよね。

アドリアン・モーリスの切れ者っぷりは凄く好きですが、結末が彼にとって都合が良すぎて、少し収まりが悪い気がしました。
逆に、最初のうち嫌いだったマノンについては、中盤、ジェームズを手に入れる為にそこまで計略を仕掛けるかと感心させられました。
あとは、女誑しだけれど実直なフランソワ・ミッシェルが結局一番いい奴でしたね。
登場人物全員が利己的である、という意味ではとてもリアルな人間を描く作品だったと思います。

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