東野圭吾著「容疑者Xの献身」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
隣室に住む女性・靖子に密かな想いを寄せる石神は、彼女が前夫を殺してしまったことを知り、偽装工作を行う。無関係のホームレスを前夫になりすませ、その人物を自分が殺して警察に捜査させることで、彼女の完全アリバイを成立させたのだ。だが自身の為に第二の不要な殺人が犯されていたことを知った靖子は、自白して共に罪を償うと。

探偵ガリレオシリーズの長編。直木賞受賞作。

有名な作品ですし、映画にもなっているので「惚れた女性が犯した殺人に対して、偽装工作をして自分が罪を被る」という大筋は知っていましたが、実は叙述トリックの要素も含まれていたのですね。
読んでいる間、「10日」という日にちにすっかり騙されていたので、湯川准教授のネタ晴らしには唸りました。

石神の、可哀想なくらい純情なところと、合理性を追求するが冷酷さのバランスが面白かったです。
完全犯罪が靖子の自白で無に帰してしまったということで、彼の献身は報われなかったとも受け取れるけれど、私自身は、靖子が自白してホッとしました。靖子としては、石神に報いる方法が自白だったんだとも思うのです。石神からしたら、まったく理解不能でしょうけれど、彼女が知的な女でないことは作中からも読み取れますから。
ただ、そういう靖子を石神がどうしてそこまで好きになれたのか、伝わって来なかったのが残念でした。確かに、恋に落ちる切っ掛けなんて、他人から見たらなんてことないかも知れないけれど、物語である以上、説得力が欲しかったです。

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