宝塚花組「エリザベート ー愛と死の輪舞ー」11:00回を観劇。
本日のルドルフは芹香斗亜(役替わり)。
今日も、定位置2階席での観劇。
トート閣下の登場の瞬間にご尊顔が見切れてしまいましたが、それ以外で気になる箇所はありませんでした。
ルキーニの「キッチュ」アドリブは、OGの野々すみ花・真琴つばさ、そして南野陽子さんがご観劇ということで御三方の写真だったようです。
私にとっては雪組再演版以来の宝塚版エリザベート。とはいえ、DVDでリピートしているので、雪組再演版の台詞回し、テンポが染み付いています。そのため、観ていて「違うな」と思うことが時折ありました。勿論、どちらが良い悪いという訳でなく、今回の花組「エリザベート」はこうなのだ、と受け止めていますが、どうしても感想の中では比較して語ると思います。あらかじめご了承ください。
なお、東宝版と比べると、皇室に入ったエリザベートが「自分らしく」生きられない困難を描いていると感じるのですが、今回は障害=ゾフィーの印象が若干薄く、その分宝塚らしいトート(ルキーニ)・エリザベート・フランツの三つ巴の恋の戦いという雰囲気を強く感じました。
今回の「エリザベート」は、キャスティングから期待していた通り、主要男役3人の歌レベルが高く、安定した公演でした。
私は、北翔海莉と望海風斗は、現役スター生徒の中で五本の指に入る歌巧者だと常々思っていますし、明日海りおに関しても、多少マイク補正はあるでしょうが、歌劇団として恥ずかしくないトップスターだと思いました。
巧いメンバーに引っ張られてか、他の面々の歌唱力も上がっていたと思います。
以下、キャスト評です。
トート@明日海りおは、予想より歌唱はシャウトしつつもクールな「死」でした。息継ぎのブレス音が何カ所か気になったけど、トートの楽曲はロック調なので、許容範囲かなと思います。
演技は、表情がやや固定化されていることが気になりますが、子ルドルフの「猫を殺した」という告白を軽く受け流すところが気に入りました。トートは当然猫の死も知っている筈なので、この反応が当然かもしれないと思いました。
小柄だという事実はどうにもなりませんが、風格も出て来たので、十分だと思います。
なお、お供の黒天使は、全体的に主張の激しい振りでした。「愛と死の輪舞」は、トートの心情が分かるような、もう少し柔らかい振り付けでも良いのではないかしら。
エリザベート@蘭乃はなは、少女時代は可愛らしく、鏡の間は美貌の皇后として輝きに満ちていました。色々難はあったけれど、ヒロイン役者だったと思います。
歌声が高いため、二幕後半は少し年齢に追い付いていない気もしましたが、退団を延ばしてまで演じたかった役だけあって、「麗しのサブリナ」以来の頑張りを感じました。
専科から特別出演のフランツ@北翔海莉は、期待値を満たしつつその上を行く、素晴らしい出来でした。
登場シーンから雰囲気が非常に柔らかく、強く厳しく冷静にと言い聞かせつつも、根は非常に心優しい青年皇帝なのだと感じます。シシィから拒絶される姿は可哀想だし、ルドルフの死を嘆く姿は哀しく、気持ちはフランツ贔屓になってしまいます。あの調子で扉の前で切々と歌われたら、扉を開けてしまうこともありそうですよね。部屋の中で苦悩するエリザベートの気持ちも感じました。
最終答弁は、それまでの鬱憤をすべてぶつける激しさで、陛下のエリザベートへの愛を感じましたが、その後「フランツ」という個人から霊魂に戻っていく演技も卓越していました。
ルキーニ@望海風斗は、客席を味方につけるのが上手ですね。ちゃんと役を与えれば、場を掌握できる役者なので、今後更なる活躍を望みます。
音月圭の演じたルキーニの演技が脳裏に染み付いているため、色々な箇所で違いを感じましたが、煉獄での証言時は全体的に狂気を感じさせ、物語の登場人物として参加しているときはさり気ないポジションに収まっているという印象。
「戴冠式」で上体を反りながら歌っているところがあり、ポテンシャルの高さに驚嘆しました。
ルドルフ@芹香斗亜は、キャラ違いの配役だと思いますが、演技はなかなか的確。歌唱力は物足りないものの、意外と低音が出ていました。
子ルドルフ@矢吹世奈は、成長して芹香になるということは納得のビジュアルでしたが、高音が頼りなく、やはり娘役向きの役だと思いました。人間的にも「猫を殺す」という不安定さが感じられず、物足りなかったです。
ゾフィー@桜一花は、非常にクールな皇太后でした。娼婦の品定めをしたときも、慌てず騒がず非常に落ち着いていて、演技プランは素晴らしいです。
ただ、私は未来優希他男役の演じるゾフィーを観ているせいか、どうしても小さく迫力不足に感じてしまいました。「シシィの寝室」で対峙した際、エリザベートの方が強そうに見えるのです。惜しいと思います。
ゾフィーの迫力不足に合わせてか、重臣たちも、夕霧らい以下の安定のメンバーながら印象は薄かったです。
革命家チームはエルマー@瀬戸かずやは熱血。シュテファン@鳳真由は、台詞回しが良く、これまでの経験が生きていると思いました。この2人はキャラクターの差も良く出ていたのですが、ジュラ@柚香光はまったく目に入りませんでした。
ツェップス@天真みちるは、格好いいおじさま。カフェでトートと握手をしたときの反応を楽しみにしていたのですが、握手がありませんでした。非常に残念です。
ルドヴィカ@花野じゅりあは、久し振りの舞台復帰がなにより嬉しいですが、とにかく明るく可愛い母親。母親というより3姉妹に見えるくらいでしたが、同時にゾフィともちゃんと血が繋がって見えるのが面白いと思いました。
マックス@悠真倫は安定していたものの、「パパみたいになりたい(Reprise)」がないので、生かしきれていない配役だと感じます。
ヘレネ@華耀きらりは、美人だけれど、オドオドしているせいか選ばれそうにない感があって面白かったです。ピンクのキラキラ衣装も、ちゃんと場違いな印象になっていました。
ヴィンディッシュ嬢@仙名彩世は、歌も演技も良かったです。精神を病んでいることが分かる視線でした。
マデレーノ@水美舞斗は、顔は美人なのですが、やはり男役だけあった大きくて重量級という印象。
逆に、マダム・ヴォルフ@大河凜は少々迫力不足に感じました。
リヒテンシュタイン@芽吹幸奈は、事務的な女官長だと感じましたが、エリザベートに対して妙に親身に振る舞うより良いですね。
その他女官たちで注目したのは、「卵の白身にコニャックを3杯♪」を歌うシャンプー係の女官です。声が非常に可愛かったのですが、顔では判別できませんでした。配役から想像すると真彩希帆でしょうか。
とても有難いことに今回はチケットに恵まれ、来週、Bパターンで観劇予定。楽しみです。