向田邦子著「あ・うん」

【あらすじ】
愚直な水田と粋な男前の門倉は、正反対の性格ながら親友である。門倉は水田の妻たみに憧れており、水田もそれを知っているものの、深い友情のもと、家族同然の親密な付き合いを続けて行く。

戦争に向かう時代に、ごく普通の人々がごく普通に日々を過ごすお話。
著者唯一の長編とされていますが、連作の作品群という感じもあり、1編ずつ読み進めるのも良さそうです。

解説でも語られている通り、門倉が水田のために家を整えている冒頭のシーンが素晴らしいと思います。あの出迎えで人間関係が見えるし、とても粋な男である門倉に惹かれて、話を読み進めることが出来ました。
メインは家庭を持つ男女の三角関係でありながら、「友人の奥さんに懸想している」とか「不倫」という厭らしさがなく、門倉と水田の男同士の友情や、さと子が経験する男女の恋といった美しい関係が重ねられ、清々しい読了感がありました。

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