葉室麟著「恋しぐれ」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
与謝蕪村は、老いらくの恋をいさめられつつ、妻子、良き友人や弟子達と日々を過ごした。そして、師・蕪村の最期の言葉と天明の大火の経験をもとに、呉春は白梅図屏風を描き上げる。

7編の短編から成る物語。
俳句と日本画という、まったく知らない世界でしたが、とても雰囲気があり面白かったです。
蕪村は俳人なだけでなく、絵師でもあったんですね。
友人・弟子という人々も蒼々たる有名人なのですが、作中の説明なく名前で分かったのは円山応挙くらいで、呉春(作中では松村月渓)ですら後から有名人だと気付きました。
そのくらい無知な状態での読書だったのですけれど、作中で作品や当時の評価が語られるので、物語を読むにあたって妨げにはなりませんでした。

登場人物である京都の文人は、皆いい人で魅力的。
特に「雨月物語」の著者・上田秋成が、意地悪なことばかり言う屈折した男だけれど、根は悪くないと感じられる人物に描かれていて、実像はどうだったのかとても気になりました。

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