津村節子著「重い歳月」

【あらすじ】
桂策と章子は、夫婦共小説を書いている。創作活動に没頭できないことを理由に度々職を投げ出す夫と、育児や家事で時間を取られて苛立つ妻。章子は、桂策が仕事に行けば彼は書けなくなるが自分が書くゆとりを持てることに後ろめたさを感じつつ、ある編集者の指導を得て一層執筆業に取り憑かれていく。

物を書く人間の業を描いた作品。
さすがです。
実際に夫婦とも小説を書いていた作家の自伝的小説であるゆえにリアルですし、読み手側も実際の出来事のように感じながら読みますが、でも物語として構成されているのですよね。その抑制具合に感銘を受けました。
また、章子の自分が書けないときの苛立ち、逆に自分だけ書けるときの若干の後ろめたさと喜びといった内面が迫ってきて、章子と一緒に揺れ動かされました。

個人的に強く突き刺さったのは、下記の箇所でした。

ものを書く人間というものが如何に自己愛が強く、その癖自身がなく、子供のように単純で、けなされれば全人格を否定された如くに傷つき、褒められれば天下を取った如くに勢いづくかということを(以下略)

作家自身が告白しているので当然ですが、あまりに真実を突かれて、恥ずかしくなるくらいでした。

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