福永令三著「クレヨン王国の十二か月」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
大晦日の夜、王妃が「12の悪い癖」を直さない限り戻らないと言ってクレヨン王国の王様が家出した。ユカちゃんは、王を探す王妃のお供に任命され、12の国を巡る旅に出発した。王妃は各国の出来事を経て悪癖を改めていく。やがて王様を救った王妃は、二人でクレヨン王国へ帰り、ユカちゃんは新しい年を迎えて、世界には沢山の色が満ちていることを知る。

名前は知っていましたが未読だった作品。
タイトルから、勝手に「クレヨン王国」というファンタジー世界を舞台にしたお話だと思っていたので、日本の普通のご家庭から始まったので驚きました。そんな大晦日の夜の現実感から、ユカちゃんがクレヨンたちの会議を見聞きするファンタジーへの導入が素敵ですね。
児童書ですので、最初から最後まで予定調和通り進むけれど、面白い。大人が読んでも楽しく、でも楽しいだけでなく教訓が含まれていて、でも説教臭くなくウィットに富んでいるという、古くても色褪せないお話でした。
自分でこんな素晴らしい作品を書けたら、その一冊で満足してしまうんじゃないかと思います。

最終盤、お洒落癖だけはなかなか治せなかった王妃が、髪の毛を抜いて魔法を掛けるシーンは、特にその後を描写されないけれど、女のお洒落を諦めてでも王様を救いたいという気持ちが籠っているように感じました。

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