垣根涼介著「君たちに明日はない」

【あらすじ】
リストラ請負会社の「クビ切り面接官」真介は、リストラ候補者を希望退職に追い込む仕事の中で、恨まれ、泣かれ、殴られる中で、働く意味や会社について考えていく。

基本的には、真介が毎回異なる会社に出向いてクビ切り面接をしていくという、短編集的な作品。
それぞれの業種の勉強にもなります。

全体的には面白かったです。その面白さを生んでいる最大のポイントは、真介の仕事設定にあります。
相手の人生を知った上で、嫌なところを抉って、退職を薦めていく。でも喜々としてクビを切るのではなく、相手がその仕事が好きかどうか考えて応対しているから、この仕事に面白さを感じるという気持ちも分かります。もちろん、全員が前向きに意欲を持って仕事しているわけでなく、過去の面接相手から殴られたりもしますけれどね。社員として働くとはなんなのか、考えさせられました。

悪い点もあります。
まず、必要以上に性描写がクドいです。
また、真介やヒロイン・陽子のキャラクター自体も、軽薄だったり、少し感覚が古いと思わされたりもするので、好みの造形ではなかったです。
最後の「去り行くもの」の話などは、クビ切りの結論が早々に見えていたし、都合良く陽子の再就職先も決まったりして、若干物足りない感じもあります。
とは言え、自分の仕事を楽しんでいる社会人が活躍しているので、気持ちよく読めました。

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