高杉良著「不撓不屈」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
税理士・飯塚毅は税法解釈を巡り国税局を相手に訴訟を起こしたが、報復として税理士免許の取り上げが示唆され、事務所や顧問先への弾圧的な捜査が始まる。職員が逮捕され、絶体絶命の窮地に陥る飯塚だったが、支援者により国会での論戦が始まり、遂に無罪判決を得る。

株式会社TKC創業者の話……ということも知らずに読みました。そのため、プロローグの段階でビックリさせられました。

現在ある「賞与引当金」が生まれる過程にこのような事件があったということは、大いに勉強になりました。
また、「自利利他」という語にも感銘を受けました。
しかし、小説としては、事態の推移を並べられているだけで盛り上がりに欠けます。また、下巻は、事件よりTKCの理念や飯塚氏がいかに活躍したかという話にシフトしていくため、率直に言えば提灯記事を読まされているような印象を受けたのが残念でした。
国家権力と闘った男を支える家族の絆を描くならそれを中心に、事件自体の推移を追うならそれを中心に、もう少し焦点が絞られていたら、話自体は非常に力強いプロットですし、飯塚氏の人物像も強烈なので、より面白くなりそうなお話だったと思います。

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