- 分類読書感想
井上ひさし著「不忠臣蔵」
赤穂浪士の討ち入りに加わらなかった19人の「不義士」の事情を描く、19編の短編集。
多少似通った展開もありますが、すべてにちゃんとオチが付いているので全編面白かったです! 「さすが、井上ひさし」と唸りました。
どの作品も、軸となる一人ないし複数人の語りで綴られている形式。
そのため、小説ではあるけれど、そのまま高座や一人芝居の台詞として使えそうです。
私は忠臣蔵自体に関しては基本的な筋しか知らないのですが、十分話に付いていけます。時代物なので当時の風俗関係で多少難しい要素はありますが、テンポの良い語りに引き込まれ、次々に読み耽ってしまいました。
個人の事情を知ろうとせず物事を判ずる世間の無責任さが恐ろしくなったり、逆に言い訳全開の人物や、忠義を騙って切り抜ける浪人、真実を歪める者もあり、と色々な人生模様を見ることができました。
なんにせよ、物事の一面だけ見てはいけない、ということですね。