檀ふみ編「映画狂時代」

映画(俳優、監督含む)にまつわる短編小説やエッセイ16編。
もっとも、俳優についての内容は、映画狂というテーマに則していないと感じたものもありました。
年代・幅が広く、何作か読んでいる作者も含まれていましたが、具合良く知らないものばかりで楽しめました。
以下、印象に残ったものだけピックアップ感想です。

谷崎潤一郎著「人面疽」

いかにも谷崎作品という印象。私の嫌いなホラーストーリーですが、呪いめいた謎の映画にぐいぐい惹き込まれました。

北杜夫著「活動写真」

映画好きの男が酒と映画に酔って、ある種幸せな終わりを遂げるお話。いかにも映画狂というに相応しい内容でした。

西川美和著「x=バリアフリー」

映画監督である氏が抱く、視覚障害者または聴覚障害者向けに映画を修正することに対しての所見を含めたエッセイ。
聴覚障害の方は字幕でなんとかなるとしても、視覚障害の方が「映画が見られる」ということに、失礼ながら驚きました。

恩田陸著「ある映画の記憶」

映画を基に現実に起きた事件を解く一人称小説だったのですが、アンソロジーの性質上、エッセイだと思って読み始めてしまったせいで、終盤の展開に少し鼻白みました。

筒井康隆著「ハリウッド・ハリウッド」

軽く笑えるコメディ。
この作品のように、高尚に見せようなんて野心が見えない、エンターテイメントに徹する姿勢は、映画でも小説でも好きだなと思いました。

三浦しをん著「思い出の銀幕」

「まほろ駅前多田便利軒」からの一編。三角関係の構成が男一人女二人の場合は長引き、男二人女一人の場合は決着が早いという曽根田のばあちゃんの言は参考に成りました(笑)。

松本清張著「顔」

ミステリ嫌いだったので、これが初の清張作品となりました。さすがに別格感があります。
石岡貞三郎を京都に呼び出さなければ、ミヤ子の一件を忘れたままで、映画を見ても気付かれなかったのか、どちらにせよ発覚していたのか……と何度も考えてしまいます。

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