小山田桐子著「将棋ボーイズ」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
元苛められっ子で自分に自信がない歩は、高校入学を機に将棋部に入る。定石を覚えるのも人一番時間が掛かり、同級生にも負け続けるが、部員達の励ましで真摯に将棋に向かい続け、ありのままの自分を認められるようになる。一方、同級生で将棋の天才・倉持は、勝負に熱意を持てない悩みを抱えていたが、団体戦の経験を経て、期待に応えられないかも知れない自分を恐れていたことと、期待に応えられた時の喜びを目指して戦う楽しさを知る。

タイプの違う男子生徒たちの友情や衝突は、ネタが将棋故に淡々としつつも、青春小説らしく爽やかでした。

作中、将棋について

将棋は相手を打ち負かして勝ち誇るものじゃないんだよ。負けを知るゲームだ。

と説明している点は、色々な意味で感心しました。

ただ、主人公が2人いるのに、その2人が終盤まであまり関係せず3年間を描くので、エピソードが少々中途半端だと思いました。
実は2人とも自分に自信が持てない似た者同士だった、という現在の終わり自体は良かったのですが、歩に関しては気が付いたら強くなって自信も持っていたという感じで、ちょっと残念。段位獲得戦にいつの間にか挑戦して、三段になっているというのも、読者としては置いてけぼりにされた感があります。
倉持の成長に関しては、分かりやすい転機が設定されているなと思ったので、倉持を単独主人公に、現在と同じボリュームで書かれていれば、もっと面白かったのでは。
そうすれば、途中でフェードアウトしてしまう上に、誰にも大きな影響を及ぼさない春久等のキャラクターを整理できたのでは。歩の家族話も、ちょっと消化不良でした。

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