大島真寿美著「戦友の恋」

【あらすじ】
漫画原作者の山本左紀は、急逝した担当編集者・石堂玖美子の思い出を抱えながら、今日を生きていく。

連作短編集。
「○○の恋」というタイトルは数多くあれど、その○○に「戦友」という語が当てられると、非常にチグハグな印象だなと思って手に取りました。もちろん、それは戦友を文字通り「戦場の友」と勘違いしていたためで、表紙を見て、「戦友と呼ぶ関係性の女友達」のことかと直ぐ気付いたけれど、そのまま読み始めて見ました。

描かれているのはごく普通の日常で、スランプとそこからの脱出だとか、初恋の人との再会だとか出来事はあるのですが、淡々と展開していきます。
また、タイトルロールである「戦友」こと玖美子の存在も、実はそれほど主張していません。1話こそ死後間もない時間軸なので彼女の話になっていますが、2話以降はそれから4年経ったという設定なので、登場率はどんどん減っていきます。
けれど、ふとした時に思い出したり、考える。
この、彼女が死んでいる世界で生き続けている自分、という感覚が全編を貫いていて、大変リアルでした。
良き友は、死んでいても良き友なんですね。

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