- 分類読書感想
安部龍太郎「戦国秘譚 神々に告ぐ」上下巻
【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
朝権回復を目指す若き関白・近衛前嗣は、従兄弟である将軍足利義輝と結び、都を支配する三好長慶の排除を画策する。長慶の臣下・松永久秀は、様々な謀でそれを退け、やがて旧体質の朝廷を倒そうと決意する。多くの思惑が交差する中、正親町天皇の即位の礼が行われる。
織田信長がまだ家督を継いだばかりの頃の、朝廷並びに京都近郊の動向が分かる作品。歴史は好きだと言いつつ、中学・高校の日本史程度の知識しか持っていないので、なかなか新鮮でした。
また、あまり良い印象がない公家の世界が中心でしたが、色々とイメージが変わる一冊となりました。特に神道、仏教絡みの記載は勉強になりました。
朝廷を盛り返そうと奮闘する近衛前嗣は、汚い手も使うし、恋の熱情においては愚かな面もあって、ヒーローとは言い難いけれど、信念を貫き通すので読んでいて清々しいです。
物語の内容においては、「天皇家」を中心とする神秘性が多分に盛り込まれており、ややオカルトチックな展開もあるので好みが割れそうですが、私は「当時の日本人に見えていた世界」と受け取りました。
本書は著者の「戦国三部作」1作目ということなので、続きも読んでみようかなと思います。