長野まゆみ著「レモンタルト」

……読み始めて直ぐには気付かず、1話目のオチの辺りでも違和感を感じた程度という鈍さでしたが、2話目に進んだ段階でさすがに気付いて目が点になりました。
普通に一般図書の棚にあった本なのですが、いわゆるBL本だったのですね。
登場する男が9割は男色家で、女はそれを許容しているという謎の世界観に、たじろいだ後、笑ってしまいました。
なお、この本は主人公が仕事での面倒事や事件を引き寄せ、義兄が推理するという形の連作短編集なのですが、ほとんどの謎は謎のまま終わるので、日常ミステリとしてはまったくスッキリしません。
しかし綺麗なラストで読了感は悪くないですし、文章は平易でスラスラ読めますし、なんとも不思議な空気感がありますし、ということで合う人はハマるかも知れません。その辺を語る解説(瀧晴巳)が秀逸でした。

それにしてもこの作品、主人公を女子に置き換えるだけで、普通の小説になりそうなのに、敢えてそうしないことで、記憶に残そうと言うのでしょうか。

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