- 分類読書感想
宮部みゆき著「ステップファザー・ステップ」
【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
不運な事故によって、遺棄児童である中学生の双子が住む家に落下し介抱された職業泥棒の俺は、引き換えとして双子の生活費を稼ぐことと、必要な時に父親を演じることを強要される。偽家族として折々に双子と付き合うちに、子供への友愛と、今の幸せを享受する心の余裕を持つように成長していく。
連作短編構成なので、良い区切りでサクサクと読めます。
現実離れした設定で日常話を描く軽いお話ですが、子供達との交流ではヒューマンドラマな面もあり、読書中は楽しかったです。
双子の両親の失踪(駆け落ち)に関するオチが付いていないので、続刊があっても良さそうですが、決着はついていないのでしょうか。
ただ個人的には、現代日本の犯罪者を主人公にした小説は好きでない、と改めて思いました。罪のないコメディ、とは言えないので、素直に笑えません。
「金持ちからしか盗まない」と義賊を気取っても所詮は泥棒ですし、盗んだ物を、気になる女性にプレゼントしようという神経も不愉快でした。
その辺が気にならなければ、もっと楽しめたかと思います。
更に、私は小賢しい子供たちが可愛いと思えない性質なので、最初のうちは、彼らを嫌がって邪険にする主人公の気持ちと寄り添えたのですが、中盤から急に子供達との絆が強まる上、そうなった切っ掛けがイマイチ読み取れず、気持ちが離れたまま最後まで読むことになってしまいました。
細かいことでは、毎話の冒頭で登場人物の説明を読まされるのが煩わしく、人間関係が複雑なお話を連載するのは難しいな、と思いました。単行本化・文庫化のときにその辺は割愛してくれても良いのかもしれません。