- 分類読書感想
永井路子著「炎環」
鎌倉幕府が成立した前後の時代を描いた連作。
- 悪禅師(阿野全成)
- 黒雪賦(梶原景時)
- いもうと(北条政子と保子)
- 覇樹(北条時政と義時※作中では四郎)
あえて頼朝や義経といった著名人ではなく、その周囲の人々の視点を使うことで、陰から表舞台にいた人物を分析しているような印象の作品。
源平合戦は「遥かなる時空の中で3」で復習した程度、今若の存在は高河ゆんの「源氏」で認識したという、非常に偏った知識しかない読者なので、梶原景時はこんな最期を遂げていたのか、尼将軍の政権はこんな裏があったのか、等と勉強になりました。己の基盤の弱さを知っていて、卑屈に振る舞う頼朝像も、武家の頭領という肩書きだけで考えると出て来ない人物像で、面白かったです。
それぞれの思惑がどう絡んで歴史が作られて行ったのか、ということが次第に見えてくる、読み応えある一作でした。